落ちてきた将軍
庭の中央。朱の袴にタスキをかけた二人が、薙刀を脇に抱えて対峙していた。試合の始まりを告げる太鼓が打たれると、二人は薙刀を高く掲げて気合を入れた。
「イザッ!」
「イザッ・・まいれ!」
二人は足の裏で玉砂砂利を踏みながら、ザッ・・・ザザッ・・・と間合いを詰めていった。
「手は抜かないわよ!言わなかったけど、これでも剣道の有段者なんだから・・・」
「それは初耳・・・・望むと所です・・・かかってらっしゃい、姉上!」
「よ〜〜〜し・・・覚悟するのね・・・妹だからといって、手は抜かないわよ〜〜〜!」
綾乃が先に薙刀を振り下ろした。その渾身の打ちを蘭が受け止めた。
カンッ!・・・軽やかな音が、江戸の空高く響き渡った。
同じ頃、紀子と美穂は、あの楠の木の下にいた。
「美穂ちゃん、もう少し掘ってみようか・・・」
「はい!・・・何が出てくるのかな〜〜」
「先輩に・・・ここを掘るように言われたのよね・・・先輩も忘れていたらしいんだけどさ・・・お殿様が、ここ掘れワンワンッ・・・だって・・・・」
「先輩!・・・何か木箱!」
「えっ!?・・・何々・・何だろう・・・」