時の番人
そう言われていたけれど
番人は、とある少女の存在を知ってしまった
その少女は、いつも空を見ていた
両親は無く、兄弟も無く
身内と言える存在は居なかった
それでも明るい笑顔を絶やさず、日々を一所懸命に生きていた
ずっと全てを見ていた番人は、人間が少しずつ
変わって来ている事を知っていた
そんな中で、少女の純粋さは
くすんだ世界の中の宝石のように見えていたのだ
少女は、病気に苦しんでいた
いつ命が尽きるとも判らない状況とも言えた
心臓に欠陥があり、移植以外に生きる術はなかった
そんな制限された時間と言うものが
少女を輝かせていたのかも知れない
息をして、物を食べ、寝て、起きる
そんな当たり前の中で、命の危険を感じる事は殆ど無い
空気が周りを取り巻いている事も、極当たり前だと感じ
欲しいものを手に入れる事も可能であり
極普通に暮らせる事も、当たり前だと感じている
少女にとって、それは当たり前では無い
日々流れる「時」を大切にすべきだという事を知っているのだ
けれど、少女の命の灯は
もう残り少ない所にあった