司令官は名古屋嬢 第5話 『なまりの中で』
バリバリバリバリ!!!
上社たちが2階を探し始めたとき、あのシャッターがこじ開けられる音が1階から聞こえてきた……。
「どこや!!!」
「アメちゃんあげるから、出てきいや!!!」
暴徒の声も聞こえてくる……。ホラー以外のなにものでもない。
ガシャン!!!
そのとき、東山が放置されていた掃除機を倒してしまった……。
「上や!!!」
暴徒の足音がどんどん大きくなる……。すぐに階段を駆け上がってくることだろう。
「もう1台を頼む!」
上社はそう言うと、安物の大きい冷蔵庫を階段へ押し始めた。東山も、似たようなもう1台の冷蔵庫を押し始める。床にこすり跡をつけながら移動する2台の冷蔵庫。
暴徒の先頭にいる男は、階段を駆け上がっていく。そして、もうすぐ2階につく彼が見たものは、階段を転がり落ちてくる冷蔵庫だった……。
彼は、その冷蔵庫に押し潰されて即死した……。後ろの暴徒は、冷蔵庫や彼の死体を乗り越えたが、2台目の冷蔵庫が転がり落ちそうになっているのを見て、階段を駆け降りていった……。
「うまくいったようだな」
「他にも階段があるだろうから急ごう」
上社たちは2階の探索を再開し、少ししてから、地上への避難ハシゴを発見した。
「それ」
上社は避難ハシゴを下ろした。地上にハシゴの先が落ちる。幸い、暴徒はいなかった。
すぐに、上社たちはハシゴを下り始めた。しかし、そのとき、暴徒の一人に発見されてしまった。2階に戻ろうとしたが、2階から暴徒の声が聞こえてきたので、2人は急いでハシゴを降りていく。
だが、上社たちが地面に降り立ったときには、また暴徒に取り囲まれてしまっていた……。2人は、暴徒に向けて発砲し、威嚇したが、弾は残り少なくなっていた。
ブーーー!!! ブーーー!!!
そのとき、トヨタの『カローラ アクシオ』(ハイブリッドタイプ)が、暴徒を跳ね飛ばしたり轢いたりしながら、突っこんできて、上社たちの近くで止まった……。その車は、黒髪のショートカットをした少女が運転しており、同乗者はいなかった。突然の出来事に、2人は呆然としていたが、
「乗って」
そう言った少女が中京都軍の軍服を着ていることに気づくと、我に返り、急いでその車に乗りこんだ。上社が助手席で、東山が後部座席だ。
後部座席の右側には、狙撃銃が置かれており、どうやら、彼女が上社たちを守ってくれた狙撃兵のようだ。
すぐに、車は急発進し、その勢いで、暴徒の一人がフロントガラスにへばりついた。運転手である少女は、ワイパーを動かして、そいつをフロントガラスから弾き落とした。暴徒は、走っていく車に向けて投石したが、一個が車のルーフに当たっただけだ。
バックミラーから暴徒が見えなくなった。
作品名:司令官は名古屋嬢 第5話 『なまりの中で』 作家名:やまさん