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司令官は名古屋嬢 第5話 『なまりの中で』

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   ターーーン!!!

 しかし、1発の高速弾が飛んできて、オバハンの包丁を持った右手に命中した。オバハンの右手の手首から先が無くなり、血や肉片がついた包丁が地面に落ちる。オバハンは、何が起きたのかがわからずに呆然と立ち尽くしていたが、東山に素早く撃ち殺された。
「味方の狙撃兵だ!」
東山はほっとしながら走り続けた。上社は走りながら、狙撃班がいる通天閣のほうへ手を振った。そして、彼は前方にいた人物を見て驚いた。
 なんと、上社がキャベツ焼きをおごってやった男の子がいるではないか。上社は、「君を保護してあげるよ」と言おうとしたが、
「父ちゃんと母ちゃんの仇や!!!」
その子供は、ポケットからサビたカッターナイフを取り出すと、上社に向かって切りかかってきた……。上社は普通に撃ち殺せたのだが、撃つことを躊躇してしまった……。

   ターーーン!!!

 彼の代わりに狙撃兵が撃ち殺した……。弾はその子供の頭部に命中し、上顎から上が消え失せる……。それと同時に、この子供を保護する価値もいっしょに消え失せた……。
 上社は悲しくなったが、感傷にひたっている暇は無かった。
「……アレを突破するのは無理そうだぞ!」
東山が走りながら、うんざりとした口調で言う。
 道の向こうから、大勢の暴徒がやって来たのだ。おまけに、暴徒の何人かが火炎ビンを持っており、他の暴徒が投げる石といっしょに投げてきた。地面で割れた火炎ビンは、道路で燃え広がった。
「あそこに逃げ込もう!」
上社はそう言うと、近くにあった大型家電量販店の建物へと走っていった。今は廃屋となっている建物の出入口のシャッターは、半開きになっていた。東山は、暴徒に向けて発砲しながら、上社についていく。
 上社たちは、滑り込むようにその建物の中に入り込むと、急いでシャッターを閉めて、鍵をかける。シャッターを閉めたことにより真っ暗になったので、2人は小型懐中電灯のマグライトを点けた。
「開けろや!!!」
それからすぐに、暴徒が到着し、シャッターを叩き始めた。シャッターは、音を立ててきしんでいる。
「……このシャッターは、そう長くは持ちそうにないな」
「ああ、別のところから早く逃げよう」
2人は、シャッターから急いで離れる。


 上社たちは、かつて大型家電量販店だった暗い室内を歩く。半分以上の家電製品は略奪されていたが、それでも何度か、放置されている家電製品にぶつかったり転んだりした。緑色の非常灯すらも点いておらず、マグライト2つ分の明かりだけが頼りだ。
「階段を上がるぞ」
「気をつけろよ」
彼らは階段から2階に上がる。地上に降りる避難ハシゴがあるかもしれないからだ。