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司令官は名古屋嬢 第5話 『なまりの中で』

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「さっきのキャベツ焼きを食べていた子供は孤児だ。だから、保護する」
上社の言葉を聞いた東山は、呆れ果てていた。
「マジで言っているのか?」
「もちろん、本気だよ。中京都に連れて帰る」
「おいおい。トンカツにソースをかけて食べる子供を連れて帰ってどうするんだよ? 東山動物園に寄贈でもするのか?」
「人として放っておけないよ」
「じゃあ、好きにしろよ。俺の目的も果たさせてくれるなら、俺も構わないからさ」
「略奪はダメだよ」
上社がそう諭すと、
「ふざけんなよ!!! なんのために残ったと思ってんだ!!!」
東山はキレた……。

「あっ」

 前方の道路の真ん中に、人が仰向けに倒れていた……。上社は、車のスピードを少し緩めた。
「どうせ死体だ。道路の真ん中で昼寝する奴なんていないだろ?」
「まあ、あれは死体だね」
「このまま轢いちゃえよ。自然分解が早くなるし、カラスが食べやすくなるだろうしさ」
「そういうわけにはいかないよ」
上社は、路肩を走るかたちで死体を避ける。運転席の窓のすぐ右に死体があり、上社は心の中でご冥福を祈る。

   ドカーーーン!!!

 そのとき、死体が爆発した……。どうやら、死体の下に、遠隔操作式の小型爆弾が仕掛けられていたようだ……。肉片や血が、爆風によって飛び散る。

   ガラガラガシャーーーン!!!

 爆発の直撃は避けられたものの、爆風により、上社と東山が乗っているプリウスは左に転がり、ひっくり返ってしまった。爆風と転倒にしよるダメージで、回転灯とアンテナなどが壊れ、全ての窓にヒビが入る。オートマチック車なので、前輪のタイヤは回り続けていた。
「東山、大丈夫か!?」
「クソ!!! やっぱり残るんじゃなかった!!!」
上社と東山は、軽傷ですんでいたが、逆立ちする形で車内にいるので、うまく身動きができなかった。
「早く外に出ないと」
上社はそう言うと、シートベルトを外し始めた。東山は、外すのに苦戦していた。

「ワァーーーーーー!!!」

 そのとき、群衆が現れ、ひっくり返っているプリウスに向かって突撃してきた……。群衆は、手に包丁やバールのようなものなどの凶器を持っており、少なくとも、上社たちを助けるつもりでないことはあきらかだった……。群衆は暴徒になっていた。
「大変だ!!!」
「ヤバイぞ!!!」
東山は無線機を使おうとしたが、アンテナが壊れているので使えなかった……。
「逃げるしかないよ!!!」
シートベルトを外し終わり、身体の向きを元通りにした上社はそう言うと、拳銃を構えた。まだ逆立ち状態の東山は、シートベルトをコンバットナイフで切り始めた。