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司令官は名古屋嬢 第5話 『なまりの中で』

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「車を止めて!」
それを見た上社が、運転している東山に言う。
「危険だ!」
「いいから!」
「わかったわかった!」
東山は渋々、車を路肩に停めた。先頭車両なので、車列全体が停まる形となる。
 子供と店主は、車列の少し後方におり、上社は車から急いで降りた。そして、ホルスターから拳銃を抜く。

「やめろ!!!」

 上社が、拳銃を構えて走りながら、泥棒の子供を殴ったり蹴ったりし続けている店主に叫んだ。そんな上社を、東山や護衛の兵士たちが追いかけてくる。
「コイツがワシの店の物を盗んだんや!!!」
店主が大声で、上社に怒鳴る。あまり聞き慣れない関西弁で怒鳴られた上社は、思わず店主に拳銃をさっと向け、
「いくらですか?」
店主に尋ねた……。すると、銃口を向けられた店主は、たじろきながら、子供が盗んだ分のキャベツ焼きの値段を言った。上社は、片手でポケットから小銭を取り出すと、それを店主に向かって放り投げた。店主は、必死の表情で金を受け取る。

「大丈夫かい?」
上社は子供にそう言ったが、子供はキャベツ焼きを手にしたまま、彼を睨んでいた……。
「……えっと、君のご両親は?」
上社は、子供のガン飛ばしに狼狽えながら言った。すると、
「おまえらのせいで死んだんや!!!」
子供はそう怒鳴ると、キャベツ焼きを両手に走り去っていった。上社は、心の中で「しまった」と後悔し、子供を見届けるしかなかった。
「ほら、もう行こうぜ」
東山の声に、上社は立ち上がって、その場から立ち去るしかなかった……。



「ああ、ここだここだ」
東山はそう言うと、商店街のある電器店の前で車を止めた。看板には『ステキヤン電器』と店名が書いてあったが、シャッターは閉じられていた。
 東山は車から降りると、拳銃を片手に、シャッターの前へ行く。上社や他の兵士たちも車から降り、店の前で周囲を警戒していた。
「すみません!!! 電話で話した中京都軍の東山という者です!!! 約束の品を受け取りに来ました!!!」
東山はシャッターを叩きながら、店に向かって叫んでいた。
 上社は、そのシャッターの近くで仰向けになっている人を見つけた。汚い布を掛け布団にして歩道で寝ているわけなのだが、いびきも動作も無かった。
「ハイハイ!!! 今開けますよ!!!」
そのとき、シャッターの向こう側から大声がして、シャッターがきしみながら開いた。開いたシャッターの向こう側に、初老の男性がいたこの男性が、この個人の小さな電器店の店主らしい。
「二人で十分だから、どうぞこちらへ」
初老の店主はそう言うと、上社と東山を店内へと招いた。
「あの、そこの人は大丈夫なんですか?」
上社は店主に言った。すると店主は、倒れている人に、シャッターを開閉する際に使う金属棒をツンツンとやり、
「もう死んでるよ」
ただそれだけ言うと、店内に入っていってしまった。東山は、店主の後を追った。
「僕と東山以外は、ここで待ってて」
上社は、他の兵士と死体をそのままにして、店内に入っていった……。