四神倶楽部物語
しかし、私はさらに現実論で、「だけどやっぱり財源が必要だろ。一体税金はどうなってるの?」と突っ込んでみました。
「お兄さん、緑星人の税金はフラット・タックスなの。言い換えれば、貧富の差なしに、各人も法人も一律に所得や利益の三分の一を頂いてるわ」
魔鈴があまりにもあっさりと答えました。
私は奇異に感じ、「それじゃ、貧しい人は苦しいんじゃないの?」とすぐさま問い返しました。
「それは福祉やサポートの分野でしょ。そこでカバーしてるわ」と魔鈴にブレはありません。
「じゃあ、年金はどうされてるの?」
今度はミッキッコが、将来自分の身に起こってくる年金問題、それが心配なのでしょう、興味津々に突っ込みました。魔鈴はそれに自信たっぷりに、「ベーシック・インカム(basic income)よ。それ以外は個人年金になるわ」と。
この答えがあまりにも簡潔明瞭だったものですから、ミッキッコは一度「ふうん」と頷きましたが、さらに「ベーシック・インカムって、誰でも一律に、例えば、毎月7万円もらえる最低限所得保障のことでしょ。そしてそれ以外は、個人の意志で積み立てる個人年金ね。これって一番シンプルで、経費も削減されて、理想の仕組みだと言われてるよね」と自分で咀嚼し、独り勝手に納得してるようでした。
他の者たちも、ミッキッコと同じように一応頷きましたが、今度は悠太が「魔鈴さん、インデペンデンスにリコグニション、それとフラット・タックスにベーシック・インカム、いろいろとよくわかったのですが、その根幹にある政治そのものは一体どうなってるのですか?」と質問が止まりません。
これに魔鈴は落ち着いて、「そうね、やっぱり詰まるところは政治よね。多分ここが日本とはかなり違うと思うわ。まず元首だけど、日本のように天皇がおられませんから、ちょっとそこが弱点だよね。気を付けてないと、独裁者が現れる可能性があるわ。だから、徹底的に権威と権力が混同されないように工夫してあるの」と。