四神倶楽部物語
魔鈴もそんなミッキッコを心強く思ったようで、「次にリコグニション、尊認ですが、人は人として、自分の存在を、社会あるいは組織の中で認めて欲しい、そんな欲望がどんな人にもあるでしょ。そしてそれが認められた時、また尊ばれた時に、人は充足感、すなわち心は満ち足り、幸せを感じると思うのよ。だからそのリコグニション、つまり尊認ある社会へと、私たち四神倶楽部が誘導してるのよ」と言葉を途切らせません。
「そらそうだよな、誰しも認めて欲しいよな、特に会社の中でもそうあって欲しいもんだよ」、私はついつい本音を。しかし、これはちょっと横道かなと思い直し、「で、政治として、具体的にはどのようなことをしてるの?」と問い直しました。
魔鈴は私の会社の話しで笑ってましたが、「そうね、尊認の一例として、お兄さん、それぞれの人には得意分野があるでしょ。料理でもスポーツでも、絵でも小説でも何でもよいのよ。それを登録さえしておけば、専門機関が個々に声を掛けてきてくれてね、そして評価もしてくれるわ。まあ言ってみれば、プロもアマチュアも、専門分野も含めての千差万別の……、努力とその結果を評価する、そう、星レベルのサークル活動ね。そんな仕組みを、政治として社会に導入してるのよ」と説明してくれました
「ふうん、なるほどなあ、みんなが繋がっていて、社会から見放されず、互いに認め合ってる。それって幸せを感じるよな、素晴らしい」
私が無条件に賞賛すると、さすが佳那瑠です、「でも、その尊認って、結局は形にしないとわからないわよね。つまり見返り、そう、お金なんでしょ。頑張った分、報酬を手にしないとね、面白くないわ。だから、尊認を推進する政府には結構大きな予算が必要となるんじゃないの?」と肝心なポイントを衝いてきました。
これに魔鈴は少しの間を取って、「佳那瑠さん、ちょっと違うんだよね。リコグニションて、人が求めているものはなにもお金だけじゃないわ。頑張ってるね、よくできてるよ、みんなそんな言葉が欲しいのよ。互いに尊(とうと)く認め合う尊認、すなわち、リコグニションが軸にある社会を私たちは目指してるのよ。だからシステムがしっかりし、きっちりと運営さえできれば、政府としてもあまりお金はいらないのよ」と整理してくれました。
「うーん、確かにね。リコグニションがもし美徳となったら、みんなが幸福を感じる素晴らしい社会となるわね」と、ここまでの魔鈴の話しで、佳那瑠は腑に落ちたようです。そしてミッキッコも「ホントだわ」と納得してました。