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四神倶楽部物語

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 禁断の関係?
 もちろんさ。隣人の男と女。部屋を繋がらせて暮らし始めたんだぜ。禁断の果実を遠慮なく、美味しくいただいたよ。龍斗、お前だってきっとそうするだろ。

 私は同意を求められ、「ああ」と短く答えました。槇澤はそれを確認して、もうあとが止まりません。
 そりゃ毎晩、貪(むさぼ)るように佳那瑠を抱いたよ。
 佳那瑠は感度が良くってね、うーうーってね。それはそれは、か細い声で鳴くんだよなあ。もうたまらなくなってしまってね。一生涯佳那瑠を離せない。いや、永遠にかな。

 そのためには佳那瑠と結婚しよう。早く籍を入れて、法律上も自分のものにしてしまわないと、誰かに取られてしまうのではとちょっと焦り出したんだ。それからすぐに、真剣に結婚を考え出したある夜にね、佳那瑠が低い声でボソボソと呟いたんだよなあ。「私が良樹さんのものになるためには、決着を付けなければならないことがあるの」ってね。

 決着?
 俺は何のことかさっぱりわからなかったけど、佳那瑠が決着と、そんなスゴイことを言ったんだぜ。
 俺にとって、それはあまりにも唐突だったものだから、ハトが豆鉄砲を食ったような顔に多分なっていただろうなあ。だけど気を落ち着かせてね、「どんな決着なんだ?」って佳那瑠に訊いたよ。するとね、やぶから棒にだぜ、しかも目にうっすらと涙を浮かべて懇願してきたんだよなあ。「山路隆史(やまじたかし)を、ここへ連れて来て。アイツは裏切り者だから」ってね。なあ龍斗よ、俺たちの同級生の山路隆史って知ってるだろ。

 私は当然山路のことは知っていました。だから、「ああ、頭が良くって、銀行に就職したヤツだね」と返しました。

 その山路だよ。佳那瑠はもう一度、山路隆史を、ここへ連れて来てと迫ってきて、あとはポロポロと涙を流し始めたんだよなあ。
 その時に俺は思ったんだ、ひょっとすれば、山路は佳那瑠の前の恋人だったのでは。その女と今度は俺が……、うーん、これは単なる偶然であって欲しいと。
 佳那瑠と山路の間にどういう経緯があったのか俺は知らない。だけど、今は俺が佳那瑠の恋人に。そして互いに結婚を考えるところまで発展してしまっている。俺たちが結婚するために、佳那瑠は前に付き合っていた山路と、この際きっちりと別れておきたいと思ったのだろう。それを佳那瑠は、決着と表現したのだと、俺は単純にそう考えたんだよ。

 それで俺は、佳那瑠にカッコ良く、よしわかった、山路をここへ連れて来るから、もう泣くなよ……、なんちゃってね。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊