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四神倶楽部物語

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 しかし、まだどうしたら良いのかよくわかりません。
 それで悠太が私たちを代表して訊いてくれました。「お婆ちゃん、俺らのチケットやパスポートはどうなってるの?」と。
 お婆さんは「何言ってんだね、この孫たちは。電車に乗ってここへ来れたんだろ、もう本人確認や手続きは、ぜんぶ電車の中で自動的に済んじゃってるんよ」と言って微笑み、あとは澄まし顔です。

「そうなんだ」
 私たち一同が感心すると、お婆さんは一人一人の手を握ってくれました。
「さっ、孫たちよ、気を付けて行きんしゃい。仲良く楽しんでくんだんべだよ〜ん」
 お婆さんは最後の言葉を縺(もつ)らせながら、すたこらさっさと立ち去って行きました。

「じゃあ、行こうか」
 お婆さんの姿が見えなくなり、私はみんなに声を掛けました。そして泉の周りを少し歩き、観音さまの桟橋へと渡りました。そこで宇宙カプセルをしばらく待ったわけです。
「ねえ、龍斗、泉にカプセルなんて浮かんでないし……、どこからやって来るの?」
 ミッキッコがいかにも心配げな顔をしています。だけど、私もそんなことわかりません。これは誰しも一緒、横から悠太が「多分、空から舞い降りて来るかもな」と適当なことを呟きました。これに反論するかのように、佳那瑠が「どこかに宇宙への扉が突然貼り付いて、そこからカプセルが現れ出てくるのよ」と、また得意分野の扉で話しをまとめようとしています。

 こんな取り留めのないやりとりをしながら、私たちは桟橋さまで宇宙貫通カプセルの出現をしばらく待っていました。しかし、緊張のためか、なかなか時間が経ちません。
「あーあ、遅いなあ」
 全員がそう感じ始めた時でした、泉の青い水面が渦を大きく巻き始めたのです。それで桟橋がグラグラと揺れました。

 それまでは気付いていなかったのですが、落下防止のためのガードバーがしっかりと桟橋の縁にありました。それを持たないと立ってられません。やがて渦は、今度は反対に、その水面を大きく盛り上げて行きました。そして、あっと言う間に、泉の水が上方へと噴き上がりました。水面が1メートルほど立ち上がったでしょうか、それと同時に泉の水底からカプセルの顔が見え始めるじゃありませんか。

 そうだったのです。宇宙貫通カプセルは空からではなく、また佳那瑠が言う扉からでもなく、真っ青な泉の底から湧き出てきたのです。そして水面上へと出現し、それからゆっくりと桟橋さまに横付けとなりました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊