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四神倶楽部物語

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 それからしばらく歩き進んだでしょうかね、私はお婆さんの横へとすり寄り、「ここにどれくらい住んでおられるのですか?」と、どうしても不思議で訊いてみました。
「孫たちは知らないんかね、早いもんでのお、もう一千年になるっちゃ。このカプセル駅を任されるようになり申して、随分といろいろな人たちの往来を見てきたんだぞえ」

「へえ、そうなんだ」
 私たちはただただおったまげるしかなかったです。そしてまた沈黙し、四人は5分ほどぞろぞろとお婆さんに付いて行きました。それから鬱蒼(うっそう)とした森へと入って行きました。そしてやっと辿り着いた所、そこには真っ青な清水を湛(たた)える泉があり、周りには白い花が咲き乱れる、そんな美しい水辺だったのです。

 さらにです、すべてを包み込むベージュ色の靄(もや)が神秘的に淡くかかっていました。
「わあ、ここって、すごい! 神がかったクールスポットだわ」
 ミッキッコも佳那瑠も、ただただ感嘆の声。
 それを気にすることもなく、お婆さんは「孫たちよ、あそこに桟橋(さんばし)さまがおわしますじゃろ」と。こんな突飛で謙譲な語り口調に、私たちは「えっ、桟橋さまって?」とまずドン引きし、あとは気を落ち着かせて、「どこにあるの?」と尋ねました。

「よーくよーく見てたもれや。泉の真ん中へ延びてるじゃろが」
 私たちは老婆が指差す方向を眺め直しますと、本当にあったのです、桟橋さまが。
 それは泉の青さと同色で気付きにくいですが、焦点を合わせよくよく確認してみますと、どうも観音さまが泉に横たわっているような……、白い花咲く岸辺から細長く突き出した桟橋があったのです。私たち全員が「ああ、観音さまね。それでなのか、桟橋さまって呼ぶのは」と納得すると、老婆はしわがれた声で説明をしてくれました。

「わかったじゃろうが、あの桟橋さまで宇宙カプセルお待ちなされ。あと10分ほどで到着してくれはるから、それに乗んなはれ。それで二つ目の駅だぞえ、グリーンスターの緑沼駅で降りるんだんべ」
 この旅は私たち四人にとって初めての旅、いや、お婆さんの話しでは初回ではないらしいが、とにかく「お婆さん、わかったよ、ありがとう」と素直に礼を述べました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊