四神倶楽部物語
この地球・東京駅に、はなはだ変てこりんな感じを覚えながら、私たち四人はとにかく人っ子一人いないプラットホームに並ぶしかなかったです。きっとみんなとんまな顔をしていたことでしょうね、すなわちポカンと口を開けたまま電車を待ったいうことですが。
そして10分ほど経過したでしょうか、地下トンネルの暗闇の奥の方から……、カタンコトン、カタンコトンと微かな音が聞こえてきました。車両のヘッドライトがゆらゆらと見えてきました。
それから間もなくして、鳶色(とびいろ)のレトロな電車が、たった一両だけでホームに入ってきたのです。そして目の前をガタンゴトンと通り過ぎ、ゴゴゴンと大きな音を発し停車しました。
「龍斗、これに乗ったらいいんだよね。だけど、だけど、ドアーが開かないわ、どうしよう」
ミッキッコが大騒ぎです。私はこういう電車に田舎で何度も乗ったことがありましたからわかってました。
「ミッキッコ、これは手動だよ。ここんとこを引けば良いんだよ」
そう言いながら、ドアーを引き戸のように、ミッキッコの目の前で開いてやりました。
「スッゴーイ!」
ミッキッコがあまりにもすっとんきょうな声を上げるものですから、こいつバッカじゃないか、と私は思いましたが、それでもミッキッコはずっと目を丸くしてました。しかし、そんなことにかまってられません。
「さあ、乗るぞ」
私はみんなを車内へと誘導しました。しかし、私たち以外に誰も乗っていないじゃないですか。その上にです、よく見れば、運転手も車掌もいません。それでもどこからともなくビーと笛が鳴り、ガタンゴトンと大きな動力音を発し、二回ほど車両を大きく前後にしゃくり、走り出しました。
「発車したわよ。これって、どこへ行くのかしら?」
あの強気な佳那瑠までもが少し心許(こころもと)なげです。それでも一両だけのクラシックな電車は私たち四人を乗せ、速度40キロくらいでしょうか、真っ暗な地下トンネルの中をカタンコトンと震動音を響かせゆっくりと走って行きます。
そして20分ほど揺られたでしょうか、小さな駅に着きました。窓からプラットホームの様子を窺(うかが)うと、白髪のお婆さんが手を振ってくれてます。
ああ、これって夢の中、と考えてる内に、老婆はよろよろとよろめきながら私たちが乗る車両に近寄ってきて、ドアーをヨイショと開けてくれたのです。