四神倶楽部物語
またそれに合わせるように、魔鈴が「朱雀の風早美月子さんですよね。こんなわがままな兄がいつもお世話になってます。ありがとうございます」と、まるで何もかも知ってるかのように礼を述べました。
当然、私は腑に落ちません。
「おいおいミッキッコ、それに魔鈴さん、これってどういうことなんだよ。俺には妹なんていないし、わがままでもないぜ」と少し熱くなり、ムキになって否定しました。するとミッキッコは「龍斗には妹さんがいたのよ、目出度いことじゃない。もっと素直に喜びなさいよ」と、やっぱり口うるさい女だ。
しかしながら、こんなところでミッキッコと言い争っても仕方がないし、また強く否定しても、ゴタゴタと言い返されるのが関の山、そんなの鬱陶しいですよね。そのため、「ああ、俺に妹がいたことが事実だったとして、魔鈴さん、なんでこの時期になって、名乗り出てきたの?」と単純に質問をしてみました。
「お兄さんたち、四神倶楽部を発足させたのでしょ。だから──目覚める時がきたのよ」
魔鈴と名乗る女性は表情明るく微笑みました。それにしても、なぜ四神倶楽部発足のことを知ってるのだろうかと私はまず不思議でした。
それでも一応、「四神倶楽部ってね、ミッキッコが朱雀で佳那瑠が白虎、それに悠太が玄武で、私が青龍です」と自己紹介し、「それはそうとして、突然目覚めよと仰られても……、ね。単に遊びの延長で、倶楽部を結成させただけなんだけどなあ」と独りぶつぶつ言うしかなかったです。
しかし、魔鈴はこんな男の呟きを聞き流し、またまた理解に苦しむようなことを話すではありませんか。「お兄さん、今日はね、みなさんを連れて一度里帰りでもしたらと思って、勧めに来たのですよ」と。
えっ、こんな突飛な話しって?
私は多分口を大きく開けて、ポカーンとしていたでしょうね。それでも一拍の間を取り、「里帰りって、どこへなの?」と気を落ち着かせ訊いてみました。
するとですよ、魔鈴が一言だけさらりと口にしたのですよ。「グリーンスターへよ」って。私はまったくちんぷんかんぷんで、「えっ、グリーンスターって? それって、みどり星ってこと? まさかまだ熟してない、若い梅ぼしじゃないだろうなあ」と、こんな笑えない冗談をかまさざるを得ませんでした。
されどもですよ、それと同時に、ミッキッコは目をキュッと吊り上げて、「ちょっとー、龍斗、出来損ないのオヤジギャグ飛ばさないでよ。ちゃんと妹さんの話しを聞いて上げなさいよ!」と恐い顔で睨み付けてきました。それから魔鈴の方に向き直って、「そのグリーンスターってどこにあるのですか?」と会話に割り込んで、勝手に、しかもしっかりと質問してるじゃありませんか。