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四神倶楽部物語

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「おいおいおい、悠太、さっきも言っただろうが、ミッキッコとは単なる業務の一環だよ」
 私はもう一度否定しました。
 悠太は脱皮物語で話し疲れたのか、「龍斗先輩、わかってますよ」とすべてを容認したかのような返事をし、大きくふうと一息入れました。しかし私は、悠太のここまでの話しがどうも眉唾ものとしか思えません。
「なあ悠太、その佳那瑠の脱皮話しって、本当の話しなのか? セミとか蝶々とかの芋虫が、背中をバキッと割って、あとは皮がペロペロとめくれていくやつだぜ。全部お前の作り話しだろうが」

 だが悠太は、「龍斗さん、嘘じゃないですよ。こういった非日常的なことって、案外世の中では起こっているのですよ」と、えらく強気。その上に続けます。
「だって、龍斗さんの古い記憶って、宇宙を飛んでる記憶でしょ。多分650万年前に、龍斗さんの先祖がUFOに乗って地球にやって来た時の記憶でしょうね。だから先輩、摩訶不思議なことって、やっぱり世の中にはあるのですよ」

 私も、たとえそれが後輩からだとしても、そこまで主張されれば、なるほどなあと納得するしかなかったです。その頷きを確認した悠太は、フランス料理のセットランチの最後のコーヒーに角砂糖を入れながら、今まで見たことがないまじめな顔付きになりました。
「それでね、龍斗先輩、佳那瑠さんから教えてもらったのですよ」

 私は脱皮補助の大仕事を成し遂げた後輩を労(いたわ)り、「何を教えてもらったんだよ?」と年端も行かぬ弟を慈しむ目で聞き返しました。
「四神ってあるでしょ。佳那瑠さんは白虎の末裔で、意外なのですが、白虎族だけがどうも崇高な脱皮をすることが判明したようです。そして、私の祖先はその玄武だったとかでして、どうも脱皮のお手伝いは玄武族の役目だとか。だから佳那瑠さんは私を本能的に探し出し、その脱皮に立ち合わせてくれたそうですよ」
 この長い悠太の講釈にふんふんと頷いてはいましたが、それよりも「えっ、おまえが、玄武だったのか」とびっくりです。

 私が探していた玄武の子孫。それが意外にも近くにいました。しかも後輩の北森悠太だと知り、目から鱗状態です。しかし、これで四枚のカードが揃ったこととなり、私は嬉しかったです。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊