四神倶楽部物語
僕は、佳那瑠さんの「ねえ、こちらにいらして」の囁きに、スケベなめまいがクラクラッと。これから男と女の淫靡(いんび)な秘め事が……、アクシデンタリーに。
そう、このUFOの船内で起こってしまうのかと、期待で胸がパクパクと。そして心はグワーングワーンとしまして、一気に発情状態に──突入しそうでした。
だけど、まことに残念なことなのですが、男と女の愛欲の世界への御招待、そんななものではまったくありませんでした。
「ねえ、悠太さん、こちらにいらして」
佳那瑠さんから再び甘い誘いがあったのですが、そこから始まった出来事、それは僕にとって、エロスの世界の戯(たわむ)れよりも、もっと神秘的なことを体験してしまうことになるのです。
僕は胸を高鳴らせながら、「こちらにいらして」とせがむ佳那瑠さんのそばに歩み寄りました。もちろん佳那瑠さんの美しい裸体を、そっと腕で包み込みました。そんな男と女の秘め事がまさに始まろうとしている瞬間でした。佳那瑠さんがもっともっと切ない声で懇願してくるじゃありませんか。
「ねえ、悠太さん、あなたの手の平を、私の背中に、左右均等にピタッと当てて下さらない。ねっ、お願い!」と。
僕は訳がわかりません。だけど佳那瑠さんに望まれるままに、大きく手の平を開け、佳那瑠さんの背骨の左と右にピタリと貼り付けました。
「うーうん、うーうん」そんな最中に、佳那瑠が苦しみ始めたのですよ。
僕はこんな事態に真剣に慌てましたよ。なぜなら、そこは鞍馬の山奥にある誰も知らない洞穴。そしてその空間内に鎮座している650万年前のUFO。その船内ですよ。
そこで、現代美女の佳那瑠さんが素っ裸で、うーうん、うーうんと唸り出したのですから。もちろんケイタイも通じませんよね。それに救急車も呼べません。
「おっ、おっ、おっ、おっ、おー、佳那瑠さん、大丈夫ですか?」
僕は心配で心配で堪(たま)りません。しかし佳那瑠さんは、そんな僕に苦しみながらも、鈴を転がすようなまことにか細い声で訴えてくるのです。
「悠太さん、裂いて、……、裂いてちょうだい!」
僕は、佳那瑠さんが言うこの裂いての意味がまったくわかりません。