四神倶楽部物語
佳那瑠さんと僕はまさに這(は)い蹲(つくば)って、その入口の岩の間隙(すきま)を通り抜け、洞穴の中へと入って行きました。その後、仲良く手を取り合って、注意深くより奥の方へと歩き進みました。
そして行き着いた先、そこには巨大な空洞が……。
そう、大きく開かれた空間がそこにはあったのです。
どうもそれがですよ、僕の古い記憶に残っていた空間のようでもありました。
しかし、そこにはもっともっと驚くべきものがあったのです。その空間の中央に、どーんと静かに座っていたのですよ。先輩、それは何だと思いますか?
悠太が突然質問を振ってきました。私は悠太の物語にすっかり引き込まれてましたから、条件反射的に「また大きな岩が二つあったのか? そこがまた入口になってたりしてな」と適当なことを口にしました。
これに悠太は親指を下に向け、「ブー」。
「龍斗先輩、僕の話しをちゃんと聞いて下さいよ、今から話しますから」悠太は勿体(もったい)付けるかのように一拍おいて、元の話題へと。それは重々しく、地底の大きな空間、その中央に威風堂々と座っていたもの、それが何かと申しますと……、なんと天車(てんしゃ)。つまり、直径30メートルはあろうかと思われる──空飛ぶ円盤──が鎮座していたのですよ。
それは紛れもなくピカピカと輝くUFOでした。
そしてそれを目にした佳那瑠さんは、感慨深く思いの丈をほとばらせました。
「悠太さん、これで私の記憶が何なのかがわかったわ。650万年前に、魔王尊のサナート・クマラが、このUFOに乗ってこの鞍馬山にやって来たのよ。その時に一緒だったのが、青龍、朱雀、白虎、玄武の四神たちよ」
「ふうん、四神ですか」と、僕は佳那瑠さんのこの突飛な謎解きにホント驚きましたよ。
だけどあとは「四神が鞍馬に降りてきた、佳那瑠さんにとっては――きっとそう」と合いの手を入れるのが精一杯でした。それにしても佳那瑠さんが止まりません。
「だから、その時の宇宙の旅、そしてここへ降臨した時の遠い記憶が、先祖のDNAに刻まれて、それが時代を越えて伝達されてきているのよ。私は時々、それをぼんやりと思い出すということなのだわ」
僕は佳那瑠さんのタネ明かしにただ押されっ放しで、彼女が何を言おうとしているのか深く考えず、「きっとそう、きっとそう」と同じ合いの手を繰り返すだけでした。
それでも、この場の流れからしてちょっと異様と思い、「佳那瑠さん、四神の祖先たちは650万年前に、宇宙の果てからこの地球の鞍馬山に着陸したってこと? それでその時の記憶が今日まで消えることなく、佳那瑠さんの脳の奥底に引き継がれてきたということなのですか?」と再確認しました。