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四神倶楽部物語

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 その後、佳那瑠さんは復習するかのように、僕に説明してくれました。
「ところで悠太さん、鞍馬寺の本殿は金堂と呼ばれてますよね。その堂内の中央には光の象徴の毘沙門天がおられ、そして向かって右側には、愛の象徴の千手観世音(せんじゅかんぜおん)が安置されてますのよ。また左側には、力の象徴の護法(ごほう)魔王尊が鎮座されてます」
 僕は「うんうん」と頷くしかなかったです。

「これらの毘沙門天、千手観世音、護法魔王尊が三身一体となられることによって、金堂の本尊である尊天(そんてん)となられるとか。そしてその尊天こそが、宇宙の万物を生かす宇宙エネルギーなのだそうですよ」
 こんな説明をしてくれる佳那瑠さん、もう神懸かってましたよ。
 そしてとても涼やかな声で、「時は650万年前のことよ。尊天、すなわち宇宙の魔王尊のサナート・クマラが金星から鞍馬山に降り立ったのだわ」と。

 美女が語るこんな伝説を、僕は木陰で身体を休めながら聞きました。もう、なんと言うか、心地よく、至福の時でしたよ。
 だけど、ここで止まっているわけにはいきません。身体も休まり、体力を回復することができましたから、ヨッコラセと立ち上がりました。佳那瑠さんも元気を取り戻したようです。
「さっ悠太さん、私たちの記憶を探しに行きましょ。きっとその洞穴には、サナート・クマラの降臨時の痕跡が残っているはずだわ。その痕跡こそが、きっと私たちの記憶を蘇らせてくれることになるのだわ」

 僕はこんな奇々怪々な解釈に、大袈裟に反応するわけでもなく、「うーん、確かになあ。サナート・クマラが降り立った痕跡があるなら、それがキーになるかもな」と一人頷きました。
 それから僕たちは、もう記憶が蘇ってくることが当然かのように歩き出しました。そして胸を高鳴らせ、山の斜面を転がったりもし、泥まみれになりながら鞍馬山の奥深くへと入って行ったのです。

 それで龍斗先輩、いいですか、苦労の甲斐あって、僕たちはついに見付けたのですよ。洞穴の入口を。
 急な山斜面に、大きな岩が二つもたれ合ってましてね。そこに隙間がありまして、そここそが洞穴への入り口だったのですよ。

「ほっほー、悠太、やったねえ! そりゃあ良かったなあ」
 私は悠太の話しにいつの間にかのめり込んでしまっていましたから、この発見報告に思わず声を上げてしまいました。悠太は親指を立てて、自信満々にニコッと笑い、あとは何もなかったかのように話しを続けます。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊