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四神倶楽部物語

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「龍斗先輩、まあまあまあ、落ち着いて下さい。先輩と佳那瑠さんの間柄はとにかくとして、まずは鞍馬山物語を最後まで聞いて下さいよ」
 悠太が人懐っこい目で訴えてくるものですから、「うん、そうだったな、話しを続けてくれ」と頼みました。

 いいですか、僕は佳那瑠さんが言う、龍斗先輩との微妙な関係がどの程度危うかったののか詮索するほど余裕もありませんでした。それで、「そうですか、龍斗先輩の知人の方なのですか、よろしく」としか答えようがなかったです。なぜなら、僕は佳那瑠さんの薫(かお)り立つ女の色気に魂を吸い取られてしまったのです。まっ、言ってみれば、魔法に掛けられたような状態でした。

 だけど、そのためだけではないのですが、私もせっかく鞍馬山までやって来たものですから、「わかりました。私たちの遠い記憶にある洞穴、ぜひとも御一緒に、探させて下さい」と佳那瑠さんからの提案を受け入れました。
「嬉しいわ。悠太さんて、やっぱりあなたの先輩より優しい人なのね」佳那瑠さんはそんなことを宣(のたま)われてましたけど、その後、僕に身体をそわしてこられたのです。

 私はこんな悠太の話しに、佳那瑠のヤツ、と思わずムッとなりましたが、ここは無言で耐えました。悠太はそんな私の心の葛藤にも気付かずに続けます。

 それで僕たち二人は仲良く、さらに上へと登り、金堂へと辿り着きました。ここでやっとこさの一休みです。川から山へと吹き上がってくる風。それが僕たちの身体を気持ちよく冷やしてくれました。そしてしばらく身体を休めた後、佳那瑠さんが何かに魂を吸い取られたかのように僕に語り掛けてきたのです。

「ホント、この鞍馬山って、人知を越えた神秘な所なのね。今から650万年前に、尊天(そんてん)の魔王尊(まおうそん)、それはサナート・クマラという神だけど、人類を救うために金星からこの鞍馬山に降り立ったんだって。悠太さん、こんな伝説知ってますか?」

 僕は今回鞍馬山に来るにあたって、当然インンターネットで下調べをしてきていました。
「サナート・クマラの伝説、ある程度は知ってますよ。ただそれが事実だったかどうかはわかりませんが」僕はさらりと返しました。しかし、美女から「知ってますか?」と試されて、なんとか「知ってますよ」と答えることができ、正直なところホッとしましたよ。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊