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四神倶楽部物語

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 それにしても、京都でどことなく背中に視線を感じていたのですよね。それが悠太だったとは。本当にどこで誰に見られているのかわからないものですね。
 私はこれからはちょっと気を付けようと反省し、ここは逆襲で、話題を悠太に振ってやりました。
「ところでお前は、なんで、5月4日に京都にいたんだ?」

 この問いがツボに嵌まったようでして、悠太はギュッと身を引き締めました。それからです、悠太はポツリポツリと自分の身に起こった――霊験あらたかな出来事、それを話し始めたのです。
「龍斗さん、実は、ここずっと、なにか遠い記憶が蘇ってきてたのですよね」

 私は悠太が明かし始めたこんな話題に興味が湧き、「ふうん、遠い記憶ってどんな記憶なの?」とすかさず聞き返しました。すると悠太は私の顔を見つめてきて、「山の中に洞穴(ほらあな)があって、その中へ入って行くと、大きな空間があるのですよ。ただそれだけのことなのですが、龍斗さん、こんな記憶が蘇ってきたことってありませんか?」と真剣な眼差しです。

 これについつい引き込まれて、私も考えてみますと、皆さまもきっと経験があるかと思いますが、この光景はどこかで見たことがある、と感じたことってありますよね。
 そう、それはいわゆるデジャヴ(既視感)と言われているものです。私は最近何回かそんな感覚に捕らわれていました。いえ、もう少し正確に申しますと、ちょっとデジャヴとは違うのですよね。それは見たような気がする、というようなフィーリングではなく、確かにそうだった、という記憶なのです。

 私の脳の奥底に眠っている遠い過去の記憶、それが蘇ってきたような思いがするのです。悠太が話すような空間ではないのですが、星空をピューと飛んでいるような記憶がありました。それで、「確かになあ、そんな過去の記憶がぼんやりと蘇ることもあるかなあ」と答えました。
「そうでしょ、全部はっきりと思い出させないのですが、多分これって遠い昔のことなんでしょうね。それで私、その空間へと繋がる洞穴の在りかは、どこなのかなあと、ここしばらくずっと思い出そうと頑張ってきたのですよ。そうしたらですよ……」

「えっ、思い出したのか? コングラチュレーション!」
 私は思わず悠太の手を握ってしまいました。この突然のリアクションが悠太は嬉しかったのでしょうか、間髪入れずに、「はい先輩、お陰様で、5月の連休前に、ついにその洞穴がどこにあるのかを思い出したのですよ」と言葉をほとばらせました。

 それから教えて上げましょうかという見え見えの雰囲気でニヤリと笑うのですよ。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊