四神倶楽部物語
私はこの期日を聞いて、悠太が可愛い後輩であるにも関わらず、なぜか急にムカついてきました。
「5月4日? だから、それがどうしたって言うんだよ?」
こうせっついてしまった私に、悠太はまことに申し訳なさそうな顔となりました。それでも覚悟を決めたのでしょうね、皿に落としていた目線をカッと上げました。
それからおもむろに、「京都で、龍斗さんとミッキッコちゃんとが、一緒にいるところを見てしまいました、すいませんでした」と。
別に謝ってもらう必要はなかったのですが、その次は奥歯に物が挟まった口調で言い足します。
「あのう……、あれって、結婚前にする……旅行ですか?」
「うっ!」
私は悠太の結婚前にする旅行という持って回ったツッコミに、不用意にも声を詰まらせてしまいました。
5月4日。確かに私は京都の一条戻り橋で、5月3日を越えられないミッキッコを、お姫様ダッコをして5月4日へと連れ帰ってきました。
そしてその後、一緒に先斗町(ぽんとちょう)へと行き、言ってみれば和気靄靄(わきあいあい)と食事をしました。それは、沙羅と言う女性からの突然の一通のメール。
そこから始まった一連の出来事。どうして5月4日に、ミッキッコと仲良く京都でデートになってしまったのか、これを話せば長くなります。このランチタイムだけでは語り尽くせません。
私はそれが煩わしいものですから、「ミッキッコとは、京都で偶然に会ったものだから、一緒に観光しただけだよ」とさらりと流しました。あとはお決まりのサラリーマンの魔法の言葉、「業務の一環だよ!」、もちろんこれで止(とど)めを刺したわけです。
悠太も花のサラリーマン。業務の一環、この言葉の威力のほどを充分わきまえています。
「龍斗さん、そうだったのですか、業務の一環だったのですね。それはそれは御苦労さまでした」と素直に引き下がるほかなかったようです。