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四神倶楽部物語

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 だが悠太は、私のこんな嫌みな反応にめげることもなく、「サッスガー、先輩! ごちそうさまです!」と勝手に結論付け、あとは満面の笑みになってやがんの。
 私はムカッときましたが、それでも一応先輩ですから、まあたまには悠太をかまってやらないと駄目かなと思いまして、無理矢理優しい表情を作って、「だけどおまえ、何か俺に話したいことがあるのだろ? 女とのもつれ話しか?」と。

 これに悠太は普段に見られない真剣な顔付きになり、「女性とのもつれ話しですか、確かにそう言われれば、そうかも知れませんね。だけどホント、奇妙な話しなんですよね」と含みを持たせた言い回しで返してきて、何かわけありのように最後にニタリと笑いました。

 それでも私は、奇妙な話し、この言葉が特に耳に残り、「じゃあ今日は、一緒にランチでもすっか」とOKを出してしまったわけです。

 昼休みとなり、約束通り、悠太とそのフランス高級レストランへと出掛けました。いつも昼食と言えば、カレーか牛丼。そして業務に追われている時は、デスクでケータリングの弁当を食べるのが普通です。
 しかしこの日は違いました。相手は後輩の悠太、まったく色気はないですが、一年に一度あるかないかの高級ランチです。

 お値段は並の昼食の10倍以上。まあ言ってみれば、普段のランチの2週間分ぐらいに相当しますかね。そのためか、パラパラとしかお客さんは入店しておらず、昼時だというのに店内はゆったりとしていました。
 私たちは落ち着いた奥の席に座り、お薦めセットランチを注文しました。そして、最初に出されたアペタイザーからエグゼクティブな気分で食べ始めたわけです。

 しばらくは取り留めのない男の会話を交わしました。そして私は間を見計らって、先輩らしく切り出しました。
「なあ悠太、何の話しだか知らないが、お前言いたいことがあるのだろ。さっ、遠慮なく言ってみろ」

 すると悠太はナイフとフォークをテーブルに、いつも動作が荒っぽい割にはそろりと置きました。それからです、「すいません先輩、……、実はですね、……、僕ちゃん、……、見てしまったのですよ」と途切れ途切れに言葉を並べました。

 私は悠太のそのじらしたさえずりが堪らなく、少し強い口調で、「何をだよ?」と目を剥きました。だけどその後はやっぱり悠太の言いたいことが読み切れず、私はポカーンと口を開けるだけでした。
 そんな私に向かって悠太は、余韻を残した一言を口にしたのです。
「5月4日に……」


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊