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四神倶楽部物語

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 私は特にそれに文句を付けるつもりはありませんでした。だが、「そんなの白虎の佳那瑠に頼んだら良かったのに」とついつい漏らしてしまいました。
「ダメよ、あの娘は。この絆を知ってからは性根(しょうね)を入れ替えたのでしょうね。禁断の扉で引っ掛けた男たちの清算に、今忙しいのだから」

 私が「なるほどね、そりゃ滅茶苦茶御多忙だろうなあ」と納得しますと、ミッキッコの目が吊り上がってるじゃありませんか。
「私たちのこの四神の秘密、絶対に他人に言っちゃダメよ、これ約束ね」
 あまりの女の迫力に私の身体は後方へと仰け反り、「俺、こんな話しを、他人になんて言うわけないだろ。アホにされそうだもんね」と図らずもついつい口を滑らしてしまったのです。
 まさにその時でした。バシッ!
 きついビンタが飛んできたのです。

 ミッキッコは私に痛烈な平手打ちを飛ばし、今にも泣き出しそうな顔に。
「龍斗、もうちょっとまじめに考えてよ。私はあなたと一緒に5月3日を越えて、今日の5月4日に戻ってきたのよ。これは偶然じゃないわ。まだ私たちには、それが何なのかがわからないけど、なにか四神の使命を背負ってしまったような気がするのよ」

 私は、ミッキッコこと風早美月子のここまでの真剣な訴えで、ひょっとすると、これって本当にそうなのかもな、と思い始めました。そして、「ごめんごめん、朱雀さん、四神の青龍、その一員として一所懸命お務めさせてもらいますよ」と私は勢い込んでこんな宣言をしてしまいました。

「そうよ龍斗、私たちはもう切っても切れない運命共同体なの。やっと理解してくれたのね、それで佳那瑠と相談したのだけど……」
 ミッキッコが今度は一転、ニコッと意味ありげに笑いました。私は「何を相談してきたの?」って、滲み出ていたかどうかは不明ですが、親愛の情を思い切り絞り出しました。これにミッキッコは無反応でさらさらと言ってのけたのです。
「青龍さんにね、四神倶楽部のリーダーになってもらおってね。これ、よろしくね」

 私たち二人の間にしばらくの沈黙が。そして、やおら私は「おいおいおい、ちょっと待ってくれよ、朱雀さん。俺は仕事が忙しいのだから」と。
 こんな役を引き受けてしまったら、もう見え見えです。必ずミッキッコと佳那瑠のお世話係になってしまう。役回りは、名誉あるアッシー、メッシー、ミツグ君と決まってますよね。で、最後は「イヤだー!」と断ったのですが、許されませんでした。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊