四神倶楽部物語
「龍斗さん、私たちにはね、スーパーナチュラルな血が流れているんだって。だから私たちは──魔界仲間なのよ」
ミッキッコからのこんなお喋り、私は酒の肴にしばらくお付き合いすることにしました。
「ほー、スーパーナチュラルね、それって超自然的な血っていうこと? それに私たちって、俺も含まれてるのか?」
「もちろんよ、龍斗さん、覚悟しなさいよ」ミッキッコはそう言いながら、私の小さなグラスに冷酒を一杯に注いでくれました。
「龍斗さん、知ってるでしょ、京都の守り神の四神を」
私は白々しく、「もちろん知ってるよ、それがどうしたんだよ?」と答えながら、注がれた酒を零さないようにして、口に含みました。
「ねえ龍斗さん、これまじめな話しだよ、だからちゃんと聞いてよね」 ミッキッコがちょっと不満そう。しかし、私はそれを気にも留めず、「ああ聞いてるよ」と邪魔くさそうに答えました。するとミッキッコは、この現実ワールドから遊離し過ぎた言葉を発したのです。
「龍斗さんは、青龍の直系なのよ」と。
その後にはなぜか、「この話しって、どうお? 割に面白いでしょ」と同意を求めてきました。
私はミッキッコの真意がわかりません。それでも私は話しにお愛想(あいそ)乗りして、「えっ、俺が四神の中の青龍って? 一番カッコ良いじゃん。じゃあ佳那瑠とミッキッコちゃんは何なの?」と大袈裟にニッコリと。するとミッキッコはまさに当然かのように、さらりと言い放ったのです。
「佳那瑠は白虎でね、私は朱雀の末裔らしいわ」
鴨川の流れが自然のまま体感できる納涼床。そんな京の優雅さの中に埋もれて、オードリー・ヘップバーン風、かつ純生ビールよりカクテル風な風早美月子と同席し、物集女の筍を肴に伏見の冷酒を酌み交わす。そして話題はミステリアスな四神様たち。
これぞ日々戦士のごとく戦うサラリーマンにとって、忘我陶酔(ぼうがとうすい)の一時です。
「ほっほー、佳那瑠は白虎だったのか、どおりで禁断の扉を開けたら食い付かれそうだったよ。それにミッキッコちゃんが朱雀って……。ヨッ、カッチョイイー!」
ミッキッコの非日常的魔界話しに、私は調子付いたのか、こんな掛け声を飛ばしてしまいました。ミッキッコはこれに目をくるくるさせながら、「チョットー、龍斗、茶化さないでよ」と即座にクレームを付けてきました。