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四神倶楽部物語

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 納涼床、それは鴨川へと床が張り出し、眺めが開け、まことに開放的。
 そして、この5月の旬の食べ物は物集女(もずめ)の朝採りの筍(たけのこ)。
 立夏も過ぎ、もう初夏を感じさせる鴨川の情景に心身を埋没させ、柔らかな筍を肴に伏見の冷酒を舌の上で転がす。そして色香は、往年のオードリー・ヘップバーンを彷彿させる風早美月子。鴨川の清流の響きに耳を傾け、一献いかがと差しつ差されつ。
 美月子も杯が進み、ぽーと赤くなってくる。それは私にとって風流そのもの。サラリーマン人生の至福の一時でした。

 しかし、そんな時でした。ミッキッコがまるで私を睨み付けるように斬りつけてきたのです。
「ねえ、龍斗さん、貴咲佳那瑠(きさきかなる)っていう女性……、知ってるでしょ」

 ミッキッコの口から飛び出した名前、それは禁断の扉の貴咲佳那瑠。私はそれを耳にして、思わず冷酒のグラスをポトリと落としてしまいました。そして私の口を突いて出てきた言葉、それはメッチャ歯切れが悪かったです。
「ああ、まあな」
 それだけでした。
「良いのよ龍斗さん、別に隠さなくっても、佳那瑠とはね、魔界の幼友達だから。彼女言ってたわよ、龍斗さんのこと、禁断の扉をせっかく部屋に貼り付けてあげたのに、龍斗さんてあまり開けてくれないんよってね。それで愛の時間切れでね、魔界に戻ってきたんだって。それって……、本当にそうだったの?」
 ミッキッコが私と佳那瑠の関係をズバリ確認してきました。

「ああ、あの禁断の扉ね。ミッキッコちゃんわかるだろ、俺、仕事が忙しくってね。それに、俺はミッキッコちゃんにぞっこんだから、佳那瑠とは深いお付き合いができなかったんだよなあ」
 私は照れ隠しというか、ちょっと嘘も混ぜ込んで、そんな回答を呟き返しました。ミッキッコは、こんな私の話を聞いて、「良かったわ、これで次のステージへと進むことができるわ」と一人納得していました。そして、それからというものは、ミッキッコのお喋りが止まらなくなってしまったのです。

「私ね、5月3日が越えられないということを佳那瑠に相談したのよ。そうしたらね、彼女変なことを言い出したのよね」
 ミッキッコはこの話しの続きを聞いて欲しそうに、私の顔をじっと覗き込んできました。私はその場の空気を読んで、「佳那瑠さんは、どんなことを言い出したの?」と反応良くすぐさま聞き返しました。するとミッキッコは、私のクィックレスポンスにちょっと満足したのか、親しみを込めるように微笑んでくれました。
 そして、まったく非日常的な話しが飛び出してきたのです。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊