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四神倶楽部物語

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 その日、ミッキッコが身に着けていたのは、春の薄手のワンピース。それにも関わらず、大胆に、かつミッキッコは何を考えていたのかよくわかりませんが、私をもう離さないぞというくらいに、その肉体を押し付けてきたのです。
 で、当然のことですが、私はミッキッコの胸の膨らみを、充分感じ取ることができたわけでして。私も男ですから、まあこれで見事に舞い上がりました。その隙を狙ってか、またまたミッキッコがびっくりするようなことを言い出しました。
「さあ龍斗さん、ダッコをしてちょうだい。あとはわかるでしょ、今度は反対よ。5月4日、5月4日と唱えながら、私をお姫様ダッコしたまま、この橋を渡って東側へと連れてって」

 お姫様ダッコ?
 私は、そんな唐突な言葉に唖然としました。
「えっ、この白昼に、この橋の上で……、お姫様ダッコ?」
 私は首をひねりながら、オッサンでありながらもモジモジと。
「龍斗さん、そんなことにビビルことなんかないわよ。だって考えてみてちょうだい、ここは今、5月3日よ。龍斗さんにとっては明らかに昨日(きのう)なのよ。だから、龍斗さんはもう過ぎ去ってしまった過去にいるのだから……、昨日の恥はかき捨てよ」

 それにしても、うまいこと言ったものですね。昨日の恥はかき捨て、って。なるほどなあ、と私はただただ感心するしかありませんでした。
 それを機に、私はミッキッコのこの論理的な言葉に勇気付けられたのか、このカクテル風の紗羅さんの足に手を回して、ヨイショと抱え上げました。おっ、俺は、不運なお姫様を救い出す王子様か、私はそんなことを勝手に思いながら、ミッキッコをお姫様ダッコをして橋を渡り始めました。

 だけれども、途中でちょっと気付いたのですよね、ミッキッコって結構重いよな、と。そしてうっかり、「おっ、割に骨太じゃん」と、こんな危険な言葉を私は思わず吐いてしまったのです。するとミッキッコは、私の首に腕を巻き付け、蛇のようにギュッと締め付けてきて、耳元で囁いてくれました。
「龍斗さん、安心して、重いのは5月3日よ。夕べから何も食べてないから、橋を渡ったら軽くなってるわ。さあ、5月4日、5月4日と呪文を唱えて、しっかりお仕事をしてちょうだい」


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊