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四神倶楽部物語

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 そんな曰(いわ)く因縁(いんねん)付きの一条戻り橋。沙羅さんは、そこで待ち合わせすることを指定してきました。
 だけど私は、沙羅さんを私の時間に連れ戻すために京都へと行くべきなのか、それとも知らない振りをしてやり過ごしてしまうのか、どう返事をしようかと迷いました。

 これって案外、私にとって運命の分かれ道なのかも知れませんね。だから慎重にと思ったのですが、結局はいつものように弾みと勢いで、次のように返事をしてしまいました。

沙羅様へ

 了解しました。
 本当にお役に立てるかどうかわかりませんが、とにかく私の時間で、5月4日の正午に京都の一条戻り橋に参ります。それでは現地でお逢い致しましょう。

 念のために、私のケイタイ番号は「090・・・・・・・・」です。

                    高瀬川龍斗より


 サラリーマンにとってのゴールデン・ウイーク、日頃の忙しさから解放されて、新たな鋭気を養う絶好のチャンスです。私も御多分に洩れず、休暇の前半は充分ゆっくりとさせてもらいました。
 そして連休も後半に入った5月4日、朝早めに起きて、東京から京都へと新幹線で向かいました。サンドイッチとコーヒーを車内販売で購入し、席で軽い朝食を取りました。だが、そんな最中でも何かずっと気になってまして……。なぜなら、この話しって本当に不可解ですよね。

 沙羅と言う女性が、私は5月3日が越えられない、だから助けに来て欲しい、と。時が越えられないって、一体どういうことなのでしょうか? 私にはさっぱりわかりません。

 そして今日は、その5月3日の翌日の5月4日です。とすると、沙羅さんは今、その運命の日が越えられないままで、まだ5月3日にいるのでしょうか?
 これって、沙羅さんにとってどんな事態になっているのでしょうね?

 こんなミステリアスな事態に、私は興味津々でした。ぜひとも連れ戻して上げたいなあと、私は思いをどんどんと膨らませていきました。だけど、こんな風になってくると、男ってダメですよね。ますます妄想が膨張して行き、沙羅さんて、髪は烏の濡れ羽色。透き通った雪の美肌で、眉目秀麗(びもくしゅうれい)な京美人かも。絶対にそうなんだろうなあ、と。

 そして挙げ句の果てに、隠されたオッパイは、うーん、きっとふっくらと膨らんでいるのだろうなあ、とか。朝っぱらからこんな妄想を巡らしていましたら、あっと言う間に10時半。京都駅に何事もなく到着しました。

 だが私はすでに妄想疲れ。目の前がボーとしていました。しかし、気合いを入れ直して、現地に向かうことにしました。

 京都駅から一条戻り橋までの道順。学生時代に過ごした京都です。それは当然知っていました。私は、京都駅から南北に走る地下鉄烏丸(からすま)線に乗って、まずは今出川(いまでがわ)駅まで行きました。
 そこで時間の調整をして、京都御所に沿って徒歩で烏丸通りを南へと下がりました。そこから一条通りを西へと入って行ったのです。

 その烏丸一条から堀川通りまでの距離、それは歩いて約10分ほど。沙羅さんとの約束は正午ですから、その5分前に、一条戻り橋に到達できるように歩行スピードを調整しながら歩きました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊