四神倶楽部物語
時間スピードが極端に遅い映像、それはまるで静止してしまったように見えます。
しかし、1コマ送りのように画像が微妙に変化して行ってます。そんな一瞬の画像でした、時間がゆっくり流れて行く映像の中で、私たち四人は腰を抜かすほど仰天したのです。
そこには赤と黒の縞模様の……、背丈は2メートルくらいでしょうか、やけに頭の大きい2匹の蜘蛛が現れ出てきたのです。
そいつらはほぼ静止している動画の中で、普通の速さで動いているじゃありませんか。そして事もあろうか、その蜘蛛野郎が坂本氏を両側から挟み込み、まるで銅像を動かすように、あっと言う間に連れ去って行きました。
私たちみんな、しばらく声が出ません。
しかし、私はこの驚愕(きょうがく)から気を静め、佳那瑠に尋ねました。「この映像って、時間を、どれくらい伸ばしたの?」と。
佳那瑠は当然そういう質問はあるだろうと思ってたのでしょう、明解に返してくれました。
「龍斗さん、この解析ソフトのマックスで、50万倍よ。イメージとしては、そうね、1分の長さを1年くらいの長さに引き伸ばしたことになるわ」
私はこれを聞いて、こんなことってあるのかと思い、言葉を失いました。そんな私を気遣ってか、悠太がその現象の解釈を説明してくれます。
「龍斗先輩、俺、聞いたことがあるのですが、多分、この蜘蛛男たちは私たちが今いるタイムワールドとは異なる時界に侵入したのですよ。だから私たちのタイムワールドのスケールで1分、それが異時界のスケールで測ると1年くらい、そんな時間を歪めた世界にヤツらは侵入しやがったんですよ」
私は徐々に理解できてきました。
「なるほどなあ、ということは、ヤツから見た我々は……、時間が止まったようなもの。そんな異時界に潜り込んだということになるのかな?」
「その通りですよ、先輩、だからヤツらは、我々から見て時間が止まったような、一瞬の時間の隙間を縫って、銅像を動かすように、あっと言う間に坂本氏をかっさらって行ったのですよ。見て下さい、こちらの映像も、幼稚園児が同じように消えますよ。これが我々から見たら神隠しで、実のところは、この蜘蛛野郎たちが犯人なんですよ」
こんな悠太の奇怪千万な分析、しかし証拠映像もあり、起こった出来事は決して神隠しではありませんでした。すなわち蜘蛛野郎たちによる誘拐事件だと判明したわけです。