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四神倶楽部物語

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 だけど、俺はあとを追うこともできずでね、随分と待ったかなあ。そうしたら夜明け前に、二人が出て来たんだ。佳那瑠はいつも通りだったけど、山路のヤツ、ヤケに嬉しそうな顔をして、にやけてやがるんだよ。
 一体何があったんだろうかと気になってね、「おい山路、どうしたんだ?」と訊いてやったら、すると山路のヤツ、ほざいたことを。
「良樹、扉の向こうに、それは素晴らしい世界があった。言ってみれば、そこはシャングリラ、最高だったよ」ってね。山路のヤツ、そんなことを言い放って、俺のアパートからそそくさと帰って行った。それから1週間後のことだよ、不幸にも事件が起こってしまったんだ。

 山路隆史がね、会社のエレベーターの扉を自分でこじ開けてね。わざわざそこへ飛び込んで、それで死んでしまったんだよなあ。

「えっ!」私はその出来事を知りませんでした。まったく信じられないことで、私は仰天しました。そしてビールを一気に呷りました。それで気が落ち着いたところで、それでも咳き込みながら、「それって、山路は自殺したのか?」と槇澤に確認しました。

 うーん、自殺ね。
 それとも事故死か他殺。ぜんぶ微妙なところだが、俺にとっては他殺かもな。なぜなら、多分山路は、会社のエレベーターの扉が二つ目の禁断の扉に見えたんだろうなあ。そしてシャングリラに住む新しい彼女に逢いに行くために、それをこじ開けて飛び込んでしまったんだよ。

 だけど龍斗、考えてみれば、この現実社会でまじめに生きてた山路だぜ。そんな彼をアパートに呼び出し、佳那瑠に再会させた。そして山路は佳那瑠に、第二の禁断の扉の向こうにあるシャングリラへと連れて行かれた。こんな行動を佳那瑠に起こさせたのはこの俺であり、充分手助けもしたんだぜ。だから俺は、結果的に、山路を殺したようなものなんだよな。

 私は急になにか危険な、というより異次元的な不気味さを感じ、槇澤が心配になってきました。
「おいおいおい、槇澤よ、それでお前、今でも佳那瑠っていう女性と、ねんごろにやってるのか?」


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊