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四神倶楽部物語

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 雪渓を越え、険しい山を登り行き、予定通りに山頂へと辿り着きました。そこからの眺望はこの世のものとは思えないほどの絶景じゃありませんか。南から北への空は明るいエメラルドグリーンに染められ、北の空へとだんだんと色は濃くなって行ってます。

 北の地平線方向は冬の漆黒の夜空でした。それを背景に幾千万の星がまるで地上に零れ落ちるかのようにキラキラと輝いています。南から北へと繋ぐ中天では、七色のオーロラがゆうらゆらと揺れ動いていました。
 それから南の眼下に目を落としますと、第三日目に訪ねた故郷の魔神岬が遠望できました。
 訪ねた時に感じた通り、岬は鋭く海に突きだしている、そのことを再確認致しました。かつ、それを頂点として、濃密な緑の大地が眼下の左右にどこまでも広がっていました。

「これがグリーンスターなのよ、美しいでしょ。だけどもっともっと南に行けば、70度の灼熱、そして北へと進めばマイナス40度の極寒なの。温暖なのは、自転のないこの星を巻く、帯巾100キロメートルほどのゾーンだけなの。だから私たちは余計に愛しいのよ、この星が」
 こんなことを口にした魔鈴、この星を慈(いつく)しむ気持ちがよくわかりました。

「そうだね、大事にしていかないとね」
 こうぼそりと呟いた私に、魔鈴は一言だけを返したのです。「地球もね」と。
 私たちはこの言葉に、胸にぐさりと突き刺さるものがありました。そして、ただただ大きく「うん」と頷くだけしか応答のしようがなかったです。

 この日はこのような魔神山登頂と観光で終わり、地底都市へと戻ったわけですが、その後はミッキッコと佳那瑠の買い物に付き合い、時間を潰(つぶ)しました。
 そして夜となり、最後の夕食を魔鈴を囲み、みんなでワイワイと楽しく取りました。だが明日は地球への帰還のために出発します。私たちには、それまでに済ませておかなければならない宿題が残っています。

「魔鈴、俺たちの四神倶楽部をどうするか、それを今夜みんなで話し合って決めるよ、翌朝旅立つ前に結論を報告するから、それまで待って欲しいのだけど」
 夕食後、私は魔鈴にそう頼みました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊