桜
大学へと進学し、俺は都会へと出て行った
地元を離れたのは、これが最初だった
知らない土地
全く違う雰囲気の街並み
それなりに勉強は大変だったけれど、充実もしていた
大人になって、就職し、学生時代も含めて
彼女も何人かは出来た
けれど、女性と付き合う度に何か自分の中で違和感がある事が多くて
長くは続かなかった
けど、その事を認めたくは無かった
彼女の手を離してしまったのは、俺だったから
間違ってはいなかったと、そう思いたかった
彼女の顔は、俺の中ではずっとあの頃のままだ
俺だけが世間に流されて、汚れて行っている
彼女の顔を思い出す度に、そんな感覚が心の中に溢れて来るから
だから・・・・
思い出さないようにしていた
誰と付き合っても、彼と重ねてしまう
大人になった彼を、思い浮かべては
小さな悲しみが心に浮かぶ
何を思ったところで、もう過去には戻れない
大学から、就職
煩雑な日常の中に、心だけ取り残された
そんな毎日を送っている
生活は充実していたけど、ただそれだけだった