桜
子供だったんだって、自分に言っていた
稚拙なだけの、ほんの小さな恋だったって
子供の私は、本当に本気で信じていた
必ず一緒に過ごせる時が来るって
遠くても、繋がりを持っていれば必ずいつか会えるって
毎日、ポストの中を覗いていた
朝、そして夕方
バイクの音がする度に窓の外を見て
朱いバイクで無い事を知って落胆する
そのうち、ため息をつく事が嫌になって
空っぽのポストが怖くなって
いつの間にか見る事を止めてしまっていた
何故、待つことばかりせずに、自分から手紙を書かなかったんだろう
返事が来なくても、出せば良かったんだ
けれど・・・・
思いついたように手紙を出したところで
拒絶される事が、何よりも怖かったんだ
電話を掛けても、沈んだ声が電話の向こうに
あったとしたら
傷つきそうで怖かったんだ
俺の事などもう何とも思っていない
そんな雰囲気を感じ取りたくなかったんだ