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死亡代行

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「いらっしゃいませ!!!」

 俺がログハウスに入ると、中にいたスーツ姿の男とOLが、元気良く挨拶してきた。俺は「あっ、どうも」という情けない返事をしてしまった。
「こちらへどうぞ」
男がニコニコ笑いながら、ソファへと促した。俺はキョロキョロしながら、ソファに座った。ログハウスの中は、小さなオフィスになっていて、一般的なオフィスの内装だった。
「死を売りに来たんですか? 死を買いにきたんですか?」
男は、向こう側のソファに座るなり、突然そんな質問を始めた。俺が詳しい説明を求めると、
「お客さまは初めてですか?」
俺はそうだと答え、樹海の看板を見て来たということを伝えた。
「では、死を売りに来たということですね? では、詳しい説明をします」
そのとき、OLがお茶をテーブルに置いた。
「私の仕事は、死を仲介することでして、死にたくない人と死にたい人とのパイプ役をしているわけです。たとえば、心臓が悪い大金持ちがまだ死にたくないからと、貧乏な人から死の権利を買うわけです。すると、大金持ちは心臓移植で助かり、貧乏な人はお金を得られるわけです。もちろん、一定の待ち時間は与えます」
俺は納得できた。どう考えても違法な商売だが、もう死ぬつもりの俺にはどうでもいいことだった。
「ご理解いただけましたか?」
俺が理解できたことと死の権利を売ることを伝えると、
「では、コースの説明に入らせていただきます」
と嬉しそうな様子だった。

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・『Aコース』……臓器移植(不健康な人のための死)
・『Bコース』……心中(一人で死にたくない人のための死)
・『Cコース』……自殺(借金の帳消しや名誉などのために死にたくない人のための死)
・『Sコース』……死刑(往生際が悪い人のための死)

――――――――――――――――――――――――――――――

 「死のコース」は、上記のものだった。大事な注意事項としては、代わりに死ぬ際に、名前や戸籍を買い主と交換しなくてはならない場合があるということぐらいだ。一番高い「死の買い取り価格」は、死刑のSコースだ。

 俺は、Sコースにした。絞首刑はただの首吊りであり、首吊り自殺とそれほど変わらないからだ。それに、本来の死刑囚と名前や戸籍を交換するわけだから、俺の家族が不名誉を被ることは無い。おまけに、死刑執行はスローペースなのが現状だから、死の待ち時間は長いだろう。
 男は慣れた手つきで書類を作成し、俺は契約書にサインをした。そのあいだにOLが、大金を用意してきた。

作品名:死亡代行 作家名:やまさん