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死亡代行

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 俺の目の前には、富士の樹海が広がっている。夜の闇が、樹海をさらに暗くさせている。

 別に、死体から「持ち主にはもう持っている必要が無い物」をもらうつもりなわけではない。他の目的といったら、自殺か死体の回収か物好きな観光ぐらいだろう。俺の目的は自殺だ。

 俺が自殺する理由は、「経済的に苦しいから」というよくある理由だ。自殺の理由としては、珍しくもクソも無いだろう。
 「どうせ死ぬなら、たくさんの人を道連れに殺して死刑になろう」と言って、自殺の手段の一つとして殺戮を実行する奴もいるが、俺にそんな度胸は無い。確かに、ただ自殺するよりかは、意味のある死を遂げられるかもしれない。一人寂しく自殺しても誰も注目しないが、たくさんの人を道連れに殺して死ねば注目される。異常な時代だとも思えるが、正常な時代とはどういう時代なのだろうか?
 ただ、よくできていない世の中だということはわかる。

 さて、さっさと富士の樹海の「住民」の仲間入りを果たすとしよう。他にも自殺する方法はあるが、たくさんの人々に迷惑をかけたり、死体が晒されるのはゴメンだ。
 よく考えた結果、この樹海で死ぬことにしたわけだ。交通費が高くつき、財布の残金がほぼゼロだが、これから死ぬのだから、気にする必要などない。お金の心配をせずに済むなんて、久しぶりのことだ。

 俺は、ゆっくりと樹海に足を踏み入れる。木の幹に落書きがあったり、自殺抑止のための看板が立っていたりする。それらを流し読みながら、樹海を進む。
 そんなとき、一つの看板が目の前にあり、俺はその看板の文字に目を奪われ、その看板の前で立ち止まった。

『死をお金にしませんか?』

……というストレートな言葉が、その看板に書かれていた。そして、その文字の下には、地図があり、さっきの樹海の入口のすぐ近くだとわかった。
 俺は非常に気になり、興味本意から死ぬ前に行ってみようという気持ちになった。なので、地図をケータイで撮影すると、入口へと引き返した。



 地図を頼りに行ってみると、そこには一軒のログハウスがあった。その小さな建物は、周りの木々とうまくマッチしていたが、『死亡仲介業』という文字が書かれた看板だけは、不気味に浮いていた。ログハウスの明かりはついており、まだ「営業中」のようだった。
 度胸が無い俺は、少しの間、その建物の近くで中に入るかを迷っていたが、どうせもう死ぬつもりなのだからということで、中に入ることにした。

作品名:死亡代行 作家名:やまさん