Magic a Load
シンは肩を竦め苦笑し、周りを確認するため、大きく息を吸った。ディビットはは?と顔つきで眉間にシワを寄せそんなシンを見つめると。
「おおおい!みんな居るか?!居るんなら手を上げてくれ!!!」
シンの声は暗い洞穴に大きく響き渡った。ディビットはその声に怒りそうになったがその怒りを抑える為、唾を飲み込んだ。
今は怒るべきではない、とディビットは確信したのだ。
シンの声にみんなは反応をし、手を上げる。シンは近くにあった細く色白な腕をぐいっ引っ張ると、そこにはリチャードの顔があった。
シンはリチャードの埃を振り払いながら嬉しげに抱きついた。
「リー、良かった。ああ、でも綺麗な顔が埃だらけだよ。」
ディビットは二人を見ながらその場を立ち上がり他の場所を色々見渡すと既にニックはナンシーを埃っぽい岩の間から引きずりだしナンシーの洋服に付いた黒い砂埃を手ではらっていた。
バーバラはシンの横でイタタと声を上げながら体を起こしシンが抱きついている相手に嫌味くさく言った。
「あら、私が女の子なのに男を優先するのね。」
「あっ、えっと、、、違うんだよ。バーバラ、君はリチャードよりは強いと思ってさ・・。つい。」
バーバラはリチャードを軽く睨みつけ突っつくように言った。リチャードは困った上場をしバーバラを見つめ何か言おうとしたがバーバラの方が先だった。
「綺麗な顔をして、シンに気に入られてるからって良い気にならないでよねっ。」
リチャードは後ろに軽くよろめいた。バーバラに軽くどつかれたのだ。ディビットはそんな風景をどこか嬉しげに見て言った。
「おいおい、早速ですか?これから先が長くなるって言うのに。まぁ俺にとってはこーゆうのは凄く好きだけどな?」
「馬鹿か、君らは今はそんな事をしている場合ではないだろ。とりあえず、今はジェイコブ達を探す事だけに集中しろっ。」
「おうおう、言うなぁ、サンチェスブラザーさんよ。さすが魔法を好きなだけってのがある者だなっ。」
ニックは何か言おうとしたが一度深呼吸をし気分を落ちつかせる。今はみんながぴりぴりしているのは仕方が無いと感じとったのだ。ナンシー、リチャード以外はみんなピリピリしていた。
この時、リチャードだけはその事に違和感を覚えていた。
リチャードはそっと呟くように聞いた。
「えっと、シン?さっき、此処に引きずり込まれる前に誰かに腕を捕まれたって言ってたよな?誰だったんだ?」
シンは腕を組み眉間にシワを寄せ上を向きながら考え込む。
暫くしシンは口を開く。
「えっと、正しくは解らねぇ。でも目は濁った黄色のような生き物だったと思う。
色は真っ黒でと言っても洞穴が真っ暗じゃはっきりした事は言えない。そうだな、、
子鬼?じゃないかな。」
ディビットはシンの話を聞くとぶはっと笑いを噴出すとすぐにニックにわき腹をど突かれた。
「シンくん、続けてくれ。」
シンは頷き言葉を続ける。
「そうそう、あそこに居るような・・・・。ってええええ!」
シンは叫び"あそこ"へと駆け寄って真っ黒い腕を引っ張った。それはとても久しぶりに見た顔だった。
シンたちはその物の姿を見ると唾を飲まずには居られなかった。
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暗い洞窟の牢屋の中でOnewRepudlicの音がかすかに響き渡っている。その横で奇妙な猫の帽子を被り膝を抱えている者がそっと呟く。
「ねぇ、何の曲聴いてるの?」
ジェイコブは片方の耳のイヤホンを外しその相手の耳にそっと差し込む。
その相手の耳に此処にはとても似合わない穏やかな曲と歌声が流れてきた。
此処がニューヨークであればとても気持ちの良い曲なのだろう。アンディはそう考えながらジェイコブの肩によりかかりその歌を聴く。
暫くしジェイコブはそっと呟いた。
「良い曲だろ?」
「うん、なんて曲なの?」
「OneRepublicのGood lifeだよ。気分が沈んでいる時には最高な曲だぜ?
っつっても、お前はこーゆうの聞かなさそうだよな。くそまじめだし。」
アンディは肩を竦め言い返す。
「そんな事無い、僕だって歌ぐらい聞くさ。いくらヲタクじみててもね。
ヲタクだからこそ詳しいかもってのもあるんだけど?」
ジェイコブはアンディの言葉に飽きれた顔を眉を吊り上げた。"はいはい"という合図だ。それからジェイコブは大人しく聞けという顔つきでアンディを見るとアンディはまた肩を竦め音楽を聴く事にした。
確かに似合わないがとても心地よい。今の暗い気分を少しでも明るくさせてくれる。
しかし、その気分もすぐに壊されるとは二人は思ってもいなかったろう。
ジェイコブとアンディは小さなゴブリンに牢屋から無理やり引きずりだされるとまたさらに薄暗い洞窟の奥へと案内された。
小さなゴブリンは口元を厭らしくにやつかせ少ししよれた低い声で丁寧な言葉をどこかに向かって言っている。
「ご主人様、この二人が新しい獲物でございます。」
ジェイコブとアンディは目を合わせ肩を竦めると次の瞬間真っ暗闇から鈍い大きな音が洞窟を響き渡せていた。
真っ白い息が二つに別れジェイコブとアンディの顔にかかる。
その姿を見ると二人も生唾を同時に飲み込んだのだった。
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シンは血相を変えリチャードの方を向くとリチャードもシンと同じくらいに血相を変えていた。というよりもリチャードの方がショックが大きかったのだろう。
シンが触った腕は大学でもリチャードとカップルのように見られていた"サラ・ベネット"だった。
サラはとてもとても醜い姿になっていた。
この姿には誰もが黙り込んだ。
一番最初に口を聞いたのはリチャードだった。リチャードは醜いサラの顔をそっと撫で言った。
「・・・・サラ・・・無事だったんだ。・・・でも・・・・。」
「何でそんな姿に?」
突っかかるように言ったのはまた別の人物だった。ニックにはその人物はどこか嬉しそうに言っているのが気になった。
「君は?」
洞窟の淡い光のランプがその人物の顔を照らし出す。その人物はサラサラな髪をいじりながら言った。
「君とその妹とその眼鏡かけている奴以外は僕の事を良く知っていると思うよ。な?それともスクールでは存在が薄くて解らないかな?
僕は、フランシス・バッカスだ」
シンたちは不思議なほどそれほど驚かなかった。むしろシンとリチャードはサラの醜い姿を目にしなければ大笑いしていたと思う。
シンはさらにアンディが居れば笑いこけていただろう。
それくらい今、周りはもの凄く沈黙だった。
シンとリチャードはフランシスを無視するとすぐサラを囲む。サラは涙声で言った。
「ごめんなさい・・・本当はもう少し早く普通の姿であなたたちに連絡すれば良かった。」
シンはサラを包み込むように抱き寄せぽんぽんと優しく頭をさする。
「大丈夫だからな。すぐに俺たちが元の姿に戻してやるから。」
フランシスは二人の態度が気に入らなかったのか淡く光るランプに向かって小石を投げるとランプに群がっていた真っ黒いガが気を狂わせたようにランプの周りを飛び交っている。
その音に二人は反応しフランシスを見た。リチャードはフランシスと目が合ったがすぐそっぽを向いた。
作品名:Magic a Load 作家名:悠華