Magic a Load
ディビットはシンにその写真をポケットに早く戻せと命じるとシンは"はいはい"とにこやかに頷きながら二枚の写真をポケットにしまいこみ、何を思ったか両手をパンっと叩きディビットに言った。
「さて、リーダー。今後どうしますか?」
ディビットは都合の良い奴だ・・と言いたそうな顔つきでシンを見ると咳払いしみんなに言った。
「とりあえずは、路地裏に向かいサラ、ジェイコブ、アンディの行方を探しに行こう。俺は既に二人とはぐれて何処で二人が消えたのかが解らない。
一番、知っているのはお前・・、リーだ。」
「おい、その名前で呼んでいいのは"俺だけ"なんだぞ!」
シンはむっとした顔をするとディビットはにっと笑い肩をぽんぽんっと叩いただけだった。そしてリーの腰を掴み言った。
「君だけが頼りなんだ。解ったか?最初に消えた場所だけでも覚えているはずだ。
教えてくれ。」
シンはむすっとした顔で自分の前に居る二人を見つめた。バーバラはそんなシンの姿が見ていられなかったのか困った顔をしながらシンの頭を撫でた。
ーーーー・・
ジェイコブとアンディはさらに暗い洞窟へと突き進んでいると真っ黒い物体と遭遇していた。ジェイコブは口をあんぐりあけその黒い物体を見つめていた。
アンディはこれは夢なのかと何度も自分の頬を抓っている。自分の頬を抓るのが飽きたのかアンディはジェイコブの頬を力いっぱい抓った。
ジェイコブはこれでもかという声を上げた。
「いってええ!!おいてめぇ!何しやがんだよっ!さっきのは"前言撤回"だ!!!」
「へぇ?君でもそんな言葉を知ってるんだ?レイエス(リチャード)からは"頭が悪い生き物"だって聞いてたんだけど?ああ。それからこれは本当に"夢"じゃないんだね。」
ジェイコブはアンディの言葉に腹を立たせ顔を真っ赤にさせていた。
アンディはそのジェイコブの顔を見て闘牛が今にも怒り来るって自分に迫ってくるように思えるとアンディは今度は笑いを堪えきれず腹を抱え瞳に涙をためてまで笑っている。
ジェイコブは怒りながらもは?という顔つきでアンディを見た。
「なんだよ?俺は怒ってんだぞ!!!」
「・・・まるで子供の喧嘩ですね。」
気弱い真っ黒い小さなゴブリンがぼそっと呟いた。アンディは小さなゴブリンを見つる。
そのゴブリンは横には肉厚がずいぶんとついていたが、どこか人間っぽかった。
他のゴブリンよりは顔つきもはっきりしている。アンディは頭の中で探ったがこのゴブリンが誰だかはすぐ思い出せなかった。
ゴブリンは真っ黒く爪が無駄に長い手をジェイコブに向かって差し出した。
ジェイコブは身を一歩引き眉間にシワを寄せアンディに助けを求めるようにちらっと見る。しかしアンディも不思議そうな顔で首を傾げるだけだった。
ジェイコブは唸るようにゴブリンに聞いた。
「何だよ?俺に・・・何か・・・?」
「いえね、私はただ、あなた様のような人物はとっても重要な人物だと思ったのと、あなた様が"ロータス・ワンドの杖"を持っているとご主人様が言っていまして・・。
すぐにでもあなた様を"ご主人様"の元へ連れてきてくれとのご命令を。
あなた様が寂しいまたは恐れているのならその"友人"ともご一緒でも構いません。」
ゴブリンは感情の無い視線をジェイコブに向ける。ジェイコブは唾を飲み込み声を震わせ言った。
「いつ誰が寂しいなんて言ったよ?俺は一人でも行けるぜ?まぁ、アンディが寂しいなら一緒に連れていってやっても構わないけど?」
「はぁ?僕は逆にその"ご主人様"とやらとハグでもしたいくらい会いたいのにね。
逆に言わせてもらえば本当は今ものすごく恐れを抱いているのはジェイコブの方じゃないのか?素直に僕についてきてくださいって言ったらいいのに。ゴブリンもそう思うだろ?」
アンディの言葉にジェイコブは耳まで真っ赤にさせ顔を俯かせてしまった。
すると小さなゴブリンはアンディにも手を差し伸べた。アンディはごつごつした手を握るのをワクワクしていた。
そしてアンディとジェイコブは小さなゴブリンにさらに狭い洞窟の奥そこへと進んで行った。
洞窟は思ったほど狭くはなく壁は全てはごつごつした石でできていて大声を出したら響きそうなくらい広い空間になっている。
ところどころに古びたランプが淡いオレンジとキイロが混じったように暗い洞窟を照らしていた。
アンディは思わずぴゅうっと口笛を吹いた。アンディはシンやニックたちにも負けないくらいファンタジー好きだったからこんな洞窟を見たら興奮せずにはいられないだろう。
だからもの凄くアンディは関心した口笛を吹いたのだ。
そして嬉しさを堪えきれずに言葉も零れる。
「すっごい。こんなの小さい頃に夢見てたけど本当にこんな世界に来れる時が来るなんて・・・。」
「・・・生きて帰れる気がしねぇ・・・。」
「は?・・・君、現実の世界では散々僕に喧嘩ふっかけてくるのにあれは何処へ行ったのさ?」
ジェイコブはアンディの言葉には何も返事をせずそっぽを向いた。小さなゴブリンはまだジェイコブの手とアンディの手を引っ張り周りに居るゴブリン達をかきわけながらまた奥へと進んで行った。
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ディビットは薄っすらと雲にようやく顔を出す太陽を見上げ口に加えたばかりの煙草にライターを当てる。
そんなをディビットじっと見て忠告するように言った。
「なぁ、ディビット、"ファンタジー"という物語には煙草は無意味じゃないかな。」
ディビットは一息吸った煙草の煙をぶわっと吐いた。その煙がシンの顔に直撃しているともしらずに。シンはごほごほとむせ込んだが顔はすぐむっとした顔に戻った。
ディビットは今度はリチャードの肩に腕を置き眼鏡を指でくいっと上げる。
「そうか?魔法使いのお爺さんとかは良く吸ったりしてるんじゃないのか?」
「・・・・まぁ、少しは吸ったりはしてるけど。」
「でもお前ほどがんがん吸う奴はこの物語には不要だって、リーは言いたいんじゃねぇかな。」
シンは二人の間に牙を剥き出すように割って入った。シンはリチャードの左側に行きリチャードの顔を見ると自然ににっこりと笑みが零れた。
リチャードも戻ってきた頃より、微笑むようになっている。それを見てよけいに笑みが零れたらしい。シンはリチャードに憧れを抱き好きすぎている。
「あは、学校でもそんな笑顔みたいのになぁ~。」
「・・・・。」
リチャードは頬を赤く染め、困った表情をディビットは見るとシンに嫌味くさく言った。
「ははは、そんな"変態様"には見せたくないんじゃないか?」
「何を!!」
シンは今にもディビットに手を出そうとし構えたがニックに肩をつんつんと突っつかれた。
「ああ?何? ・・・・」
ニックの無な笑みにシンは何も言えなくなった。この時、3人はニックは本当に"魔法使い"ではないかと思わされるほど黙り込んだ。
しかしニックはにっこり笑いおっとりした口調で言った。
「そろそろ、本当に3人を探さないと・・・。レイエスくん。とりあえず、さっき教えてくれた道を・・最初の頃に連れ去られた場所に案内してくれ。」
作品名:Magic a Load 作家名:悠華