DEAD TOWN
飲み屋の場所は、家からそう遠くないところにあった。その道中、柊はずっと考えていた。だからといって、今更考えたってどうしようもないことは分かっている。ここを出て行けば人付き合いも最小限になるだろうし、女と付き合うなどきっと無いに等しい、と言い切ってもいい。そんな自分なのに、今頃何を反省しようとしているのか。時間(とき)が経てば、いずれはこの記憶も風化してしまう。死ぬ間際だって、もしかしたらここにいたことを思い出さないかもしれない。そんなあやふやな過去に、自分は何にしがみ付こうとしているのか。明日からは、こことは真逆な生活が待っている。そこに帰ることは、勿論自分が願っていたことなのだ。だから、喜ばなければいけない。一度は、二度と元の世界には戻れないかもしれない、と愕然とし諦めていた。けれど、あの女によって、その断絶された道が切り開かれたのだ。そう、あのエリナという女に―――。