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「舞台裏の仲間たち」 41~42

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 順平が、同じ金型の仕事をしている新入劇団員の雄二と
初めて行き会ったのはそれから間もなくのことでした。
市内を少し外れた処に工場を構えている、新進の金型工場を訪ねた
時のことです。工場と言っても此処で働いているのは、
社長を含めてわずかに4人にすぎません。


 この時代、機械加工技術の最先端を走る金型業界でしたが
そうした先進的な役割とは裏腹に、工場の規模は5人前後という
まことに零細な町工場がほとんどです。
熟練した加工技術と、最新式で高価な加工機械の導入を必要とするために、
小さな地方都市の桐生周辺では、大規模の金型工場は育ちません。
それはまた、パチンコ業界のプラスチック製品のみに限定をされていたという
桐生独特の市場背景にも起因をしています。
それでも、パチンコ関係を主な取引先としつつ
弱電家電メーカーや自動車部品などとも取引を始めた金型工場が
市内を中心にすでに10社が立ち上がり、それぞれにしのぎを削り始めていました。


 80年代にはいると、
こうしてプラスチック製品の全盛の時代がやってきます。
資源確保のための最大戦略とされた国家的プロジェクトのひとつ、
大規模な石油コンビナートの建設も、各地で大成功をおさめました。
こうした背景のもと、無限の可能性を秘めた資源として
石油が大変に注目をされ、やがてここから石油製品全盛の時代が始まります。


 訪ねた先の工場には、
この時代の最先端をいく精密な加工機械が所狭しと並んでいました。
その隙間を縫ってさらに奥へ進むと、これまた導入されたばかりの
MC(マシニングセンター)が設置されています。
そのオペレーター役が、新入団員の雄二でした。

 座長から既に話は聞いていたのか、初対面の挨拶もそこそこに
雄二はうちとけた笑顔をみせて対応をしてくれます。