妄想クラブより バック・シート・ドール に愛をこめて
もう愛せない いえ愛さない
迷いぬいた答え
この後ろ髪を曳かれながらも、もう分かれようとする思い、決意。分かりますねえ、女性ならではの表現だと感じます。決めて尚忘れられない思いと流した涙の数、小娘ではこうはいきません、やはり酸いも甘いも経験したある程度の年齢の女性でしょう。この時この作詞した中里さんまだ30歳前ではないでしょうか。良くこのような感情表現ができるもので、後になって考えるとご自分の事を書いたとも感じられますね。
時計の針の 重なりにさえ
胸は妬けて苦しむ
午前零時を知らせる時計の針を見てじっと待っている未だ帰らぬ彼が、針の重なりのように他の女性と肌を合わせているのを時計の針の重なりで思うわけでしょう。男が帰宅するのに日付が変わるとまた別の意味を持つということを思い知らされる一行、ここがこの曲の詩の中で一番重要かつ、女心を如実に表現していると思います。
時計は壁に掛かっているのでしょうか、キッチンテーブルの上の目覚ましでしょうか、それひとつでも随分雰囲気が変わりますよね。後ろでテレビがお笑い流している訳でもなく音楽が聞こえるわけでもなくカタッ、カタッと聞こえる秒針の音に、ただじっと過去の事を思い出し待っている健気さ。デジタル時計や、流行のスマートフォンの画面を見るのとでは思いが随分違うと思いませんか?女性の心理描写が良くイメージできますよね。想像力が凄いし深いですね、恋は辛いものをひしひしと感じさせます。
作品名:妄想クラブより バック・シート・ドール に愛をこめて 作家名:のすひろ