うそつきうさぎ
ももいろうさぎのお母さんは心配していました
いつもなら出かけていても、何度も様子を見に帰ってくるからからです
けれど、もう暗くなろうとしているのに
まだ帰ってきません
探しているところを、村の大人のうさぎに話しかけられて
大騒ぎになりました
優しいももいろうさぎが、黙ってどこかに行くはずが無いと
みんなが一様にそう思ったからです
捜索隊が出来て、みんなで探すことになりました
ももいろうさぎの友達が、見かけた事を話しました
走っていった方向を指して、大人たちはそちらの方へと向かいました
もちろんそれは、崖の方向です
暗い中をランプの光をたよりに、ももいろうさぎの
捜索をしている間、お母さんは村で待っていました
そして、ぐったりした様子のももいろうさぎが
大人たちに抱えられて帰って来ました
お母さんの腕の中に戻ってきたももいろうさぎ
その姿はまるで眠っているかの様です
お母さんにも、周りのみんなにも
ももいろうさぎがもう死んでいる事は判っています
お母さんの悲しみは余りに大きすぎて
声を出す事も出来ませんでした
悲しい涙だけが、いつまでも止まりませんでした
「崖の下に落ちていたんだよ
なんであんな所に行ったんだ……」
「この子があんな危ない所に近寄るはずは無いのに」
「私たちだって、あんなところには
よほどの事が無いと行かないのに」
「行ってはいけない事は知ってたはずだ」
大人たちは口々にそう言いました
崖に近寄る事は、危ないからという事以外に
子供のうさぎを食べようとする
大きなヘビの巣が近くにあるからです
「何か知ってるかい?」
泣いている子供たちに、大人たちがたずねました
「私たちは、走っていくのを見かけただけで
何もお話ししてないから……」
そう言って顔を見合わせた子供たちの表情にも
悪いことをした様な暗さがありました
その子供たちの後ろから
「朝、はいいろうさぎと話しているのを見たよ」
と、男の子が言いました
その言葉に、大人たちが素早く反応します
「はいいろうさぎはどこだ?」