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フェル・アルム刻記

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六.

 夢の最中にいたような霞んだ意識は急に明瞭となり、彼はその平原にひとり立ちすくんでいるのにふと気がついた。
 漆黒の夜の下の平原には何もない。しかし、野心に満ちた闘気がひしひしと、空気を伝ってくるようだ。
「いよいよ、時が来たっていうのか……」
 彼は剣を見つめてひとりごちた。
「とはいえ、この場所からは距離がある……間に合うかどうか……」

 漆黒の剣を携えた公子は、思惑が重なり合うであろうその地に向かって歩き始めた。






作品名:フェル・アルム刻記 作家名:大気杜弥