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歴詩 集

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『本能寺炎上』

 轟轟(ごうごう)と燃え盛れ 
 紅蓮(ぐれん)の炎

 人間(じんかん) 五十年
 下天(げてん)の内を くらぶれば

 うつけの夢を 灰と化せ 

 めらめらと燃え上がれ
 天魔の野望

 ああ 夢まぼろしのごとくなり


 時は水無月(みなづき) 本能寺
 翻(ひるがえ)った反旗は 水色桔梗の旗印

 ドン、ドン 轟(とどろ)き劈(つんざ)く
 夜明けの種子島(たねがしま)


 察してはおったぞ 光秀
 それとはなしに 其方(そち)の謀反(むほん)を

 お主は詠んだ 愛宕百韻(あたごひゃくいん)を
 時は今
 雨が下(した)しる 五月哉(さつきかな)

 ゆえに 猿の援護にと
 遠ざけるつもりじゃった


 光秀 お主は
 逢魔(おうま)が時に 亀山城を出陣

 敵は本能寺にあり と
 それはあまりにも 不意なことじゃった

 一万三千の兵を率いて 桂川を渡った
 一方 我が方の本能寺は
 手勢百で 迎え撃つことに


 捨て鉢と錯乱
 されど知謀(ちぼう)の 光秀の謀反

 とならば、無念ながら……
 是非に及ばず

 蘭丸 火を放て!

 我が身を 二度と世に晒すな
 肉も皮も すべてを焼きつくせ

 赤々と 狂い燃え立て 天魔の炎

 一欠片(ひとかけら)の骨も
 決して 光秀に渡すな

 天下布武の野望
 国を盗り 神となることだったぞ

 こんな尾張の
 おおうつけの夢 炎上し 灰となれ


 囂々(ごうごう)と燃え盛れ 
 紅蓮(ぐれん)の炎

 人間(じんかん)五十年
 下天(げてん)の内を くらぶれば

 戦国から 安土桃山へと 駆け抜けてきた
 そんな軌跡の結びは 本能寺炎上

 幼かった吉法師の夢 灰となれ


 めらめらと燃え上がれ
 天魔の野望

 一欠片(ひとかけら)の骨も
 決して 光秀に渡すな

 ああ、確かに 確かに
 人間(じんかん) 五十年

 夢まぼろしのごとくなり




作品名:歴詩 集 作家名:鮎風 遊