昭和の旧車名車とともに 第一部
ホンダ S600 と SF
ホンダから発売された2人乗りオープンカーS500はS600を経てS800となり最終形の800Mまで続きました。今でもそのファンが多いことはご存知の通り、気持ちよく回るエンジンと軽い排気音、開発者の考えが見えてくるエンジンと、どれをとってもすばらしい。私もそのファンの末席のひとりとして今でも所有しているわけです。このライトスポーツ、乗ってもいじっても楽しいからファンが多いのはうなずけます。
車の感想は現在も色々な方がオーナーとなり、今なお元気で走らせていますのでそちらへお譲りするとして、やはり当時の思い出を書くことにしましょう。
私がこのホンダスポーツファンになったのは発売されて間もない昭和44年ごろでした。近所に白のS600に乗ったお兄さんがいて、時たま軽い排気音をたて家の前を通り過ぎているのを見て、かっこいい車だなと憧れたものです。当時大卒の初任給が26000円の時に50万以上した車ですよ、普通のものは買えるはずありません、スーパーカブでさえ高嶺の花でしたから。
しかし私の好みとは違い周りの友人は、「大きいことはいいことだ」で、スカイライン、ブルーバード、カローラ、サニーとハードトップやクーペに惹かれていました。特に「技術の日産、信頼のトヨタ」の2強の出す車は人気があり、ホンダ好きは変わり者といわれたほど、今となってその変わり者・・・私にとっては正しかったようです。
車が持てるなんて、夢のまた夢の中学生。
当時通っていた中学校の近くにHONDA SF がありました。Service factory の略なんですね。ホンダの販売網は自転車店からスタートし、バイク車となったので車のサービスが出来ない。そこで専用工場SFを立ち上げそこが一手に点検修理を受け持っていたと記憶しています。その頃人は大型で雨風の心配の無いパワーのある乗用車へ流れていましたので、すでに2人しか乗れないスポーツは人気が無かったのか、SFの道を挟んだ反対側空き地に数台置かれていました。今ドラえもんの「タイムマシーン」を貸してもらえるならあれを取ってきたいですが、机の引き出しから出せないでしょうか!?そうだ!スモールライトも貸してもらおう。
自転車を漕いでSFへ向かうと小学生から憧れのSが空き地に無造作に数台置かれています。幌は幌ではなくボロになった赤いSは鍵など掛かっておりません。興味津々の私は小さなドアを開けるとその運転席に無断で忍び込みました。コクピットといわれる通り狭い運転スペース、シートに座ると握りの細い3本スポークフラットハンドル、シフトレバーの短さ、カチャカチャとレバーを動かしては「ストロークみじか!!」と感動の声をあげ、低いフロントガラス越しに見える風景に自分が運転し流れる景色を妄想したものです。
作品名:昭和の旧車名車とともに 第一部 作家名:のすひろ