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「舞台裏の仲間たち」 36~37

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 「茜さんは、レイコに、
 たぶん女の本音を聞きたいのでしょう。
 男たちが傍に居ては、それらを簡単には口に出来ません。
 恐らくそんな話題になると思います・・・
 まぁ、たまにはそれもいいでしょう。
 それにしても、昨日も今日も良いお天気ですねぇ。
 ここは、庭にまで芸術が溢れています、
 実に見事な景観そのものです。
 何度も足を運んだという、石川さんの気持ちが
 充分に解ります」


 男たちが中庭をゆっくりとめぐり、やがて二号館に向かい始めたころ、
女性二人はまだ、膝まずいて螺旋のかたちで宙を仰ぐ碌山の絶作
『女』を前に無言のまま並んで立ちつくしています。
これが二度目となる茜は、早くもまた別の感動を見つけ出したのか、
すでに、その目をほのかに潤ませています。

 
 「ねぇレイコちゃん、正直に答えて。
 あなたにはこの碌山の『女』が、どんな風に見える。」


 「目に希望の光が見える。
 でも不思議ねぇ、
 この彫刻には瞳が刻まれていないのに、その瞳自体を強くかんじるの。
 でも一体何を見つめているんだろう・・・
 背中にはなにか抗えないほどの重いものを背負っている感じなのに
 瞳から額にかけて聡明な輝きを感じるわ。、
 たぶんそれは、希望だろうと思うけど・・・」


 「うん、私も其れを何となく感じはじめた。
 変よね・・・
 前回は暗い未来しか見えなかったような気がしたのに。
 確かに、希望のような輝きも秘めている」


 レイコが半歩、茜に近寄ります。
茜もそれに応えて、レイコの側へ上半身を傾けます。
ほとんど距離を置かずに、二つの顔が横一列に並びます。
少しだけためらった時間の後、レイコが茜に問いかけます。

 「やっぱり聞いてもいかしら。
 劇団の誰に聞いても本当のことは教えてくれないし、
 たぶん、茜さんにはとても失礼な質問になってしまうと思います。
 それでも、かまいませんか?
 私が、質問をひとつだけしても。」