おぼろげに輝く
平常心を保とうと頭は動いているのだけれど、バカ正直な身体は涙を流す。何が悲しいんだ。命は取り留めたと言っているではないか。
「何事もないとは思うけど、何かあったときのために、ご両親が来るまでこのまま待機してもらえればと思うんだけど」
口を開けば嗚咽にしかならないと思い、俺は無言のまま頷き、席を立った。勝手に肩がひくつく。
元いた黒いベンチに座り、ポケットから曽根ちゃんの家の鍵を取り出した。もう片方のポケットにはペンダントヘッドがある。それも取り出すと、鍵についていた猫のキーホルダーのリングに、ヘッドを通した。ヘッドは作ったときのまま、艶やかな多色の光を反射している。
光を、失わないでくれ。俺はそのヘッドを握りしめ、ぼたぼたと垂れる涙を手の甲で拭いた。