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「舞台裏の仲間たち」 34~35

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 青春時代に戦争を体験したちひろは、
「世界中のこども みんなに 平和としあわせを」
ということばを残しています。
ちひろが描いた子どもや花たちは、今でも、いのちの輝きと、
平和の大切さを雄弁に語り続けています。

 西洋で発達した透明水彩絵の具という画材を用いながら、
水をたっぷり使ったにじみやぼかし、大胆な筆使いを生かした描き方には、
むしろ日本の伝統的な水墨画に近い表現をみることができます。
赤ちゃんや花びらなどを描く時には、輪郭線を描かずに色のにじみで形を表す
「没骨(もっこつ)法」という技術が用いられています。

 ほかに、先に塗った色が乾く前に別の色をたらして複雑ににじませる
「たらし込み」や、筆のかすれたタッチを生かした「渇筆(かっぴつ)法」
など、実にさまざまな技法が駆使されています。

 また、こうした水彩の表現とあわせて、
的確に描かれれている線自体の美しさも、ちひろの絵のもつ
大きな魅力のひとつです。
画家を志した20代後半から、ちひろはデッサンの習練に励み、
息子を得てからは、成長していくその姿を数多くのスケッチに残しています。

 納得のいくまで線を追求し続けたことが、
流麗な線を生み出すいわさきちひろの原点となっています。
ちひろは後年、どんな格好でも人間の形なら
モデルなしで描けると語っています。
優れた技術に、母親としての愛情と、みずみずしい
感受性が融合したところに、いわさきちひろの豊かな作品が
生まれたといえるでしょう。 



 「ねぇ、順平。
 やっぱり、絵が書きたくなったんでしょう・・・
 見ているだけの私だって、うずうずしてくるもの。」


 「そういうものを感動と呼ぶんだよ、レイコ。
 良質の感動は、必ず人を行動に駆り立てる。
 心が揺さぶられると、人は自らの能力の中で身動きをしたくなる。
 芸術にはそういう力が秘められているのさ。」