八方美人のすすめ 4月 2日 お遍路 追加
綺麗な金
とある団体で年末になると活動資金を集めるカンパがあり、この年も行われようとしている。
以前は会員もたくさん居て、会費も潤沢にあり、加えて活動が盛んでそのおかげもあってカンパもたくさん集まっていたが、年とともに会員は減り、不況の煽りで給料は減少、そのためカンパも少なくなってしまった。
「ねえ昨年はいくら集まったかな?」
団体の責任者が経理担当に聞いた。
「昨年は134530円、その前は165420円。今年は去年ほど行かないかも、年々少なくなって」と帳簿を閉じながらその金額を伝えた。
「そうね、去年くらい集まればいいけど」
経理担当は毎月帳簿を締めるので、このままではあと数年で運営資金がそこをつくことが気になっていた。
「優子さん、このままではこの団体ももう運営できなくなりますよ。会費だけじゃ無理ですよ、何とかしないと」
会長の優子はその話を何回か聞かされ気にはなっているが、自分の仕事も忙しく会があっても議題に上げることもしなかった。
「そうね、以前からそういわれているけど・・・なにかね」と今日も話を先送りした。
それから数ヵ月後来年の活動についての会議が開かれた。
「それでは来年の予算について経理担当から説明をお願いします」
経理担当のあゆみは前年度同様の予算を書いた表を全員に回すと重たい言葉で話を切り出した。
「昨年同様の活動で予算を組みましたら、年度末はマイナスになります。活動するなら収入を増やす、収入に合わすなら活動を大幅に縮小しないとやれません」
当然のことだった、何年も会員の多い昔のままのやり方でやってきたのでとうとう帳尻が合わなくなっただけのことだった。
「そう。・・・さあみなさんどうしましょう」と役員の明子が言うも誰も意見を言うものはいない。
「とりあえず支出を抑えないと」
優子はカットできるものはすべてカットし、何とかカンパでその場をしのごうと切り出した。しかしそんなものでこの状況が打破できるわけも無いことくらい全員が分かってはいた。
「あの、一つ提案があるのですが」
そう切り出したのは経理のあゆみだった。
作品名:八方美人のすすめ 4月 2日 お遍路 追加 作家名:のすひろ