陽だまりの午後
彼が屈託のない笑顔で縁側に上がる。そして若者独特のしなやかな指が私の肩に触れる。
その瞬間、私の身体がビクッと跳ねた。
久々に触れた男の手に私の女が反応したのかもしれない。
彼は柔らかく揉みしだく。それは天にも昇る心地よさだった。
「はあー……」
私の口から愉楽のため息が漏れる。
「気持ちいいですか?」
「ええ、とっても……」
すべての過去が陽だまりに溶けていきそうな錯覚に襲われる。彼の指先ひとつで辛い記憶も、穏やかな時間の流れに変わる。
「それにしても綺麗ですね、その写真……。あ、失礼、今でも綺麗だ」
「ありがとう……。女っていうのはね、華やかだった過去を支えに生きていくものなのかもしれないわ……」
午後の日差しが優しく私たちを包んでいる。本当に気持ちのよい、小春日和の午後だ。
(了)