世界とセカイ
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突然の自分の襲来から既に二週間。それは異常な程に俺の精神を蝕んでいた。
彼奴の事、もう一人の俺の事以外何も考えられなかった。
最初は小さな疑問だった。それが徐々に大きくふくれあがり、今に至っては恐怖すら感じていた。
(なんだよ彼奴……!?)
急に現れ、急に攻撃し、急に去っていった。
この二週間、もう一人の自分が現れて来てからというもののろくに学校には行けず、睡眠・食事共にほぼ全く摂れていなかった。
自分の部屋のベットに潜り込み、眠ろうとするが眠れない。すぐにあの男の顔が脳裏をかすめて俺を不安にさせる。
もしも彼奴がまた現れたら?もし本当に俺を殺しに来たら----
----俺はどうすれば良い?
その言葉で頭がいっぱいになったその時、突然布団が捲られた。
「起きろ、行くぞ」
そこに立っていたのは、顔に幾多の切り傷を負い血を流していた----
「俺だ」
「お前……!? どうして」
「今は説明している暇は無い。早くしないと『歪み』が消えてしまう。急げ」
「お、おう……?」
ゾクッ! と鳥肌が立つ。殺人衝動が突然沸き立つ。殺してやりたい……! そう思う。
もう一人の俺は眉をつり上げ、とても鋭い目つきであったがその声はどこか優しいところがあり、俺としたことが安心感を感じていた。
とりあえずジャージに着替えようとベットから出ると、そいつの全身を確認することが出来た。
右手には血がべったりと付着したサバイバルナイフ、右太もものホルスターには連射によるものか、銃口が一部割れてしまったハンドガン、背中には1mはありそうな日本刀を所持していた。
俺の持っているのと同じ服を着ていて、それはズタズタに切り裂かれ一部焼け落ちており、まさに戦闘してきました!とでも言うようだった。
「ほら、ボーッとしてないで早くしてくれ」
「あぁ……、悪い」
あまりの重装備と気迫に、殺してやりたいという気持ちが失われつつあった。
「で、どうすんだ?」
白色のライオンの刺繍が入った、有名なスポーツ用品店の黒いジャージセットを身に纏った俺は可笑しくも、対面している自分にそう聞いた。
「セカイに来てもらう。今は、自分達二人の力が必要だ」
「セ、セカイ?」
「この世界の悪い事が向かう最終地点……強いて言うならばこの世界の裏側ってところだな」
「裏側……?」
「ああ、例によって俺はその裏側の世界の裏側のお前。お前の心の中の闇……は大袈裟すぎるが、ニュアンス的にはそう言うことだ」
世界の裏側……?
そんな物、あるなんて思っちゃ居なかった。
すべての物に表と裏があるように、世界にも裏側があっただなんて。
そこまで考えると、ふとある疑問が生じた。
表と裏は人為的じゃないと基本重ならないんじゃない?
「なぁ、ちょっと聞きたいことが」
「それは、走りながら聞く」
そう言うと、窓を開ける。
すると突然空間がグニャリと歪んだ。
「セカイへようこそ……ってね」
その歪みは中心から徐々に黒く染まり始めた。