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短編集 1

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一粒の光。







 指を使って、点と点を結んで星座を描いていた。特に何の意味があってやっていることではないが、空を眺めているだけでは、とてもとても暇など潰すことができない。こうして星座を描いても、退屈なことに変わりはないのだけど。どうして空の見える場所で、こんな退屈なことをしているのか、なんて無粋なことを聞くものじゃない。単純に待ち合わせをしていただけだ、友人と。
 星が特別好きなわけでもない。空が特別好きなわけでもない。雲や小さく点々とした光を眺める以外にすることが全くないからだ。時間を指定したのはあちら側なのに、相手が大幅に遅刻している。かれこれ二十分以上は一人でここにいる。
 展望台の木でできた頑丈な柵に、軽くもたれ掛かった。こうして一人で暗い場所にいると、考えなければいけないこと、考えたくないこと、良くも悪くも色々なことが頭の中を巡り巡る。数年前まではそういう時間も好きではあったけれど、今この歳となっては考えたくないことを休みの日まで考えるのは正直、苦痛を伴うというものになってしまった。つまらない仕事を毎日毎日こなしていかなければ生きていけない世界の狭さと、自分の小ささが、空を見ると改めて感じる。嫌になる。これ以上自分を追い詰めてどうしようというのだろう。
 頭を振りその考えを追い出し、ポケットから煙草とライターを取り出して火を付ける。学生時代はこの紫煙をよく毛嫌いしたものだが、今は吸いたくなる気持ちはわかる。人前では吸わないようにしているが。
 いっそのこと、隅々まで考えてみようか。
 きっと、今もどこかで自分と同じように悩んでいる人がいる。夜も眠ることができないほどに、不安と未来への恐怖に怯えている人がいるのだろう。かつての自分がそうであったように。いずれはやりたいことや、なりたいものを強要されて探さなくてはいけない。早々に見つかった人は、そういう意味では幸運なのかもしれない。暗くなると、嫌なことを思い出す、そういうものだ。
 けれど、明けない夜はない。という言葉通り、不安も永遠に抱えているわけではなく、いつかは取り除かれる。どんな形になっても、不安という形は消え去ってしまう。“恐怖”か“安堵”か“追憶”なのかは知らないが。
 眠気に負けるように、瞼が降りてくるのを耐えながら欠伸をする。
 時期が遅すぎた、大好きな夢に向かうには。
 もう何も聞こえない、何も見えてなんていない。堕落した現実の世界の恐ろしさに気付く前に、ただひたむきに思う道へ進んでいけばいいのだろう。







“まだ幼い君にはわからないのかもしれないけれど。”
“好きなことをひたすら追いかけていればいい。”
“夢は一粒の光と、道となるから。”
“周りの目を気にしていたら、臆病にしかならないから。”
“やりたいことを堂々とやれよ。”









「……まま」
「あら、いっくん起きたの?なぁに?」
「ぼくはなにがちゅきなの?」
「どうしたのそんなこと言って」


ぼくのままはへにゃりっておかおをして、だっこしてくれた。


「そうねぇいっくんはお星様が好きだよね」
「おほちしゃま」
「ふふふ、“お星様”」
「ぼくゆめでおほししゃまみたんだよ!」
「本当!?いっくんは本当に好きなんだねぇ」


ゆめにはしらないおにいちゃんがいたけど、ままにきいてもわからないよね。にこにこしてるままをみながら、ぼくもおかおがへにゃりってなった。


「ぼくはねおおきくなったらおほしさまにあいたい」
「そう…!じゃぁたくさんお星様のこと知らなくちゃね!」
「うん!!あとね、おてがみかきたいの!!」
「どんなお手紙?」
「ゆめのなかにでてきたしらないおにいちゃん」
「じゃぁ、いっくんママと一緒にお手紙書こっか」
「かく!」






―…ゆめのなかのおにいさゃん へ
ぼくはおにいさゃんのいってることはわからなかったけど、すきなものはおほししゃまです。
おにいさゃんにもすきなことがみつかるといいですね。
ぼくはがんばって、かっこいいうさゅうひこうしになります!!
さいとういつる より…―――







「いっくん、お兄ちゃんの“ち”は“さ”じゃないよ?」
「まちがっちゃった」









――――――――――…一粒の光。END(20110817)

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作品名:短編集 1 作家名:海山遊歩