短編集 1
「……それは、わかりません…」
悲しそうに顔を歪める彼を見て、自分まで悲しくなってきた。そんな顔をさせたいわけではなかったのに。
どういう道を来たか、覚えていない。ただ、足下しか見ていなかったような気もする。神秘的なお祭りから離れて、現実味を帯びた自分がいる世界へと戻ってきた感覚があった。手を離されたと気付いたときには、彼の姿はなかった。
ただ一言、耳に届いた風の便り。
『ありがとう、また会いましょうね』
その答えは、もちろん…― 『はい』
――――――――――…幽霊桜END(20110817)
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